今年も確定申告の季節がやってきますね。
確定申告受付開始の2月16日まで、あと1か月!
2023年(令和4年分)の申告期限は、従来どおりの3月15日までとなっています。
あわてないよう、今からしっかりと準備しておきたいところです。
ということで、今回は、2023年の確定申告がこれまでの手続きからどのように変わったのかについてみていきましょう。
また、おさらいとして前年(2022年)以前の変更点や注意事項も掲載していきますので、そちらもご確認を!
2023年(令和4年分)に確定申告を行う必要がある副業収入のあった会社員さん、個人事業主の皆さまは、ぜひ本記事で要点を押さえて、スマートに確定申告を終わらせましょう。
それでは、どうぞ!
1.確定申告書の様式に関する変更点
はじめに、確定申告書の様式に関する変更をみていきましょう。
今年の確定申告書は、
- 書類が統合されて簡素化が図られていること
- 事業所得と雑所得の明確化
という、2つ大きな変更があります。
申告書Aが廃止され、確定申告書が一本化
確定申告書は、これまで「A」と「B」に分かれていました。
Aは簡易版の位置づけで、会社勤めの人が医療費控除を受ける場合や年金と給与の両方から収入がある場合などに使われ、2023年からはBに統合される形になり、「確定申告書」と様式が一本化します。
具体的には、従来の確定申告書Aは「給与所得」や「雑所得」の申告に特化した様式でした。一方、新様式は「事業所得」や「不動産所得」などの申告にも対応しているんです。そのため、ほとんどの会社員にとっては関係のない記入欄が増えています。
これまで申告書Aを利用していた人にとっては、項目の多い書類となるため複雑になったように感じるかもしれませんが、基本的にはこれまでと同じ項目を埋めればOK。落ち着いて書類を確認しましょう。
確定申告書Aとの違い
- 第一表の収入欄に、事業所得や不動産所得の項目ができた
- 第一表の「税金の計算」の欄に、予定納税に関する項目ができた
- 第一表に「修正申告」の欄ができた
- 第二表に「退職所得のある配偶者・親族」に関する欄ができた
- 第二表に個人事業税の欄ができた
修正申告書第五表(別表)が廃止され、第一表に修正申告欄が追加
確定申告書と同様、修正申告の書類も簡素化されました。
修正申告は、確定申告期限内に申告した税額が本来納付すべき額より少なかった場合に申告期限後に修正して申告する手続きです。
これまでは申告書の「第一表」と「第五表(別表)」の提出が必要でした。2023年からは第五表(別表)が廃止となり、第一表に欄を追加する形で統合されます。
一定の雑所得の申告について、収支内訳書の提出が必要
収支内訳書は、これまで事業所得や不動産所得などで提出が求められていました。
2023年からは、副業の収入など営利を目的とした継続的な雑所得(業務に係る雑所得)について、収支内訳書を提出する義務が生じます。
対象となるのは、前々年分の雑所得の年間売上高が1,000万円を超えた場合です。
注意したいのが、収支内訳書提出の必要は売上高で判断される点です。
雑所得は売上から経費を引いて金額を算出しますが、収支内訳書の提出は、雑所得の金額でなく、売上高が1,000万円を超えた場合に適用されます。
混同しないようチェックしましょう。
「雑所得(業務)」における書類の取り扱いが厳格化
前々年分の業務に係る売上高が300万円を超えた場合、業務に係る雑所得について、請求書や領収書など取引に関する書類の保存が義務化されました。取引に関する書類は、確定申告後5年間は保存する必要があります。
雑所得は、「公的年金等」「業務に係るもの」「それ以外」の3種類に分けられます。このうち業務に係る雑所得の例としては、原稿料やデザイン料、講演料、ネットオークションやフリーマーケットアプリ、シェアリングエコノミーによる収入などが挙げられます。
「事業所得」と「雑所得」の違い
「事業所得」と「業務に係る雑所得」の区別は、原則として、その所得を得るための活動が社会通念上事業と考えられる規模であれば事業所得、そうでなければ業務に係る雑所得となります。
所得を得るための活動が事業に該当するかについては、営利性・有償性、継続性・反復性、企画遂行性、精神的・肉体的労力、人的・物的設備、取引の目的、職歴・社会的地位・生活状況などを総合的に勘案し判定することとしています。
ただ、明確な基準が定められているわけではありません。このため、目安として設けられたのが帳簿書類の記録と保存です。
次のような区分で判断されることになります。
- 概ね事業所得:記帳・帳簿書類の保存がされている
- 概ね業務に係る雑所得:売上高300万円を超え、記帳・帳簿書類の保存がない
- 業務に係る雑所得:売上高300万円以下で、記帳・帳簿書類の保存がない
引用元:「所得税基本通達の制定について」の一部改正について(法令解釈通達)雑所得の範囲の取扱いに関する所得税基本通達の解説(国税庁)
参考:タックスアンサー(よくある税の質問)No.1500 雑所得(国是庁)
2.税制改正に伴う変更点
次に、税制改正に伴う変更点として、主な要素を見ていきましょう。
「住宅ローン控除」の適用期限延長・控除率の縮小など
住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、住宅ローンを組んでマイホームの取得、新築、増改築を行った場合、その住宅に住んでいる人を対象として設けられた所得控除です。税制改正に伴う主な変更点は以下のとおりです。
- 対象となる期間を4年延長(2025年12月31日までに入居した人)
- 控除率を1%から0.7%に引き下げ
- 所得制限が3,000万円から2,000万円に引き下げ
- 所得が1,000万円以下の場合、床面積要件を緩和
- 新築住宅の控除期間が原則10年から13年に延長(中古住宅は10年間に据え置き)
参考:
・住宅ローン減税(国土交通省)
・タックスアンサー(よくある税の質問)No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)(国税庁)
居住用財産の買い換えなどに関する特例の見直し
マイホームの買い替えで売却益が出た場合、利益の繰り延べができる特例(特定の住居用財産の買替及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例)があります。買い替えた住宅を将来売却するまで課税を繰り延べさせることができます。変更点は以下のとおりです。
- 対象となる期間を2年延長(2023年12月31日まで)
- 新築住宅の場合一定の省エネルギー基準に適合しているものを対象
参考:タックスアンサー(よくある税の質問)No.3355 特定のマイホームを買い替えたときの特例(国税庁)
「セルフメディケーション税制」における対象医薬品の見直し
セルフメディケーション(特定の医薬品購入額の所得控除制度)は、健康の維持増進や病気予防への取り組みを行う人が特定の医薬品を12,000円を超えて購入した場合、最大で8万8,000円まで所得控除(医療費控除の特例)を受けることができる特例措置です。
この税制が適用される健康関連の取り組みには、人間ドックや健康診査、がん検診、特定健康診査、特定保健指導などがあります。医薬品については、これまではスイッチOTCといって、医師によって処方される医療用のものうち、ドラッグストアで購入可能な医薬品に転用されたものが対象でしたが、2022年からは、効果の薄いスイッチOTCが除外され、一部の非スイッチOTC医薬品が対象範囲に含まれるようになりました。
また、制度の適用期限が5年間延長され、2026年12月31日までとなり、上記の取り組みに関する書類の確定申告書への添付も不要となりました。
なお、セルフメディケーション税制は、通常の医療費控除といずれかを適用させる選択制です。両方を併用することはできませんので注意してください。
参考:
・セルフメディケーション税制(特定の医薬品購入額の所得控除制度)について(厚生労働省)
・タックスアンサー(よくある税の質問)No.1129 特定一般用医薬品等購入費を支払ったとき(医療費控除の特例)【セルフメディケーション税制】(国税庁)
・令和3年度税制改革 1個人所得課税(2)セルフメディケーション税制の見直し(財務省)
・セルフメディケーション税制の見直し(令和3年度改正)(財務省)
その他手続き上の変更点
確定申告で、その他手続き上の変更点についてもみてきましょう。
関連書類の電子データ提供が可能に
電子帳簿保存法の改正を受け、これまで紙に出力して添付していた書面を電子データで提出できるようになりました。すでに電子データでの提出が可能だった生命保険料控除などに加え、社会保険料控除も電子データで提出できるようになりました。
スマホアプリ納付ができる(PayPayなど)
QRコード決済など普段の買い物に使用している決済方法を用いた国税の納付が2022年12月1日から可能になりました。「国税スマートフォン決済専用サイト」にアクセスし、決済方法を選んだあとにチャージした残高から納税額が差し引かれる形の納付で、一度の納付手続につき30万円の上限があります。
対象となる決済方法は、PayPay(ペイペイ)、d払い、au PAY、LINE Pay、メルペイ、Amazon Payの6種です。クレジットカード決済による納付では納付税額によって決済手数料の負担がありましたが、この納付方法だと納税者側に手数料負担が発生せず、コンビニや銀行窓口へ行って納付する手間もいりません。また、決済方法によっては通常の支払いと同様のポイント付与もあります。24時間いつでも納付でき、便利です。
参考:
・[手続名]スマホアプリ納付の手続(国税庁)
・[手続名]スマホアプリ納付の手続 スマホアプリ納付のQ&A(国税庁)
スマホで決算書が作成可能に(確定申告等作成コーナー)
スマートフォンを利用した確定申告がさらに簡便になりました。国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で、2023年から青色申告決算書・収支内訳書がスマートフォンから作成できるようになります。
また、マイナポータルとの連携で、確定申告手続きに関する控除証明書などの必要データを一括取得し、各項目へ自動的に入力する機能も拡充されました。2023年からは、新たに医療費通知情報(1年分)、公的年金などの源泉徴収票、国民年金保険控除証明書も対象となります。
その他、過去にマイナンバーカード方式で申告した人については、マイナンバーカードの読み取り回数が1回だけでよくなり、利便性が向上しました。
参考:
・スマホとマイナンバーカードでe-Tax
・マイナポータル連携で確定申告書に自動入力(国税庁)
2023年(令和4年分)の提出期限
2023年の確定申告は、従来どおりの期間(2023年2月15日~3月15日)です。近年はコロナ禍を考慮し、期限への対応も弾力的に運用されていましたが、2023年(令和4年分)の申告・納付期限は通常通りの3月15日までと発表されています。
確定申告の情報は国税庁のサイトに掲載されます。今後の情報に注意しつつ、早めの申告・納付を目指しましょう。確定申告書を提出しただけで納付を期日までに済ませないと延滞税が課せられる可能性があります。
2022年以前の変更点について
参考までに、前年分(2022年/令和3年分)の確定申告について、主だった変更点をみておきましょう。
税務関係書類における押印が不要に
2021(令和3)年度の税制改正により、行政手続きのデジタル化を図るため、簡素化や業務効率化の一環として、多くの税務関係書類の押印義務が廃止されました。確定申告書についても同様です。確定申告書、青色申告決算書、収支内訳書への押印が不要になりました。
その他にも、青色申告を選択するために必要な「開業届」「青色申告承認申請書」も、また、給与所得者が勤務先に提出する扶養控除等証明書も、押印の必要がなくなっています。
電子帳簿保存制度の改正に伴う電子データ利用に関する要件の緩和
電子帳簿保存法により、帳簿書類を紙ベースではなく電子データ上で保存するための要件として、税務署への事前承認制度の原則廃止やスキャナ保存に関するタイムスタンプ要件・検索要件の緩和など、電子データが利用しやすくなるよう要件の緩和がなされています。
電子帳簿・スキャナデータの保存については、従来の紙による保存も可能ですが、電子取引については、所得税や法人税で記帳・帳簿の保存の義務のある人全員の対応が求められているものです。電子メールなどのツールを通じてやりとりした請求書や、ウェブサイト上からのダウンロードした領収書など、紙を使わないデータの取引分については電子データの保存が必要です。2022年1月から2023年12月までは、電子取引を紙にプリントアウトした保存も認められますが、2024年1月からは要件に従って電子データを保存する必要が生じます。
参考:電子帳簿保存法が改正されました(R3.12改訂)(国税庁)
ふるさと納税の添付書類が簡素化
ふるさと納税は、それまで寄付先の自治体が発行する寄付金ごとの受領書の添付が必要でしたが、2022年の申告から、ふるさと納税のポータルサイトを運用している特定事業者(ふるさと納税のポータルサイト運用者)が発行する年間寄付額の「寄付金控除に関する証明書」が添付書類として認められるようになっています。
自治体ごとに自力で証明書を管理する必要がなくなり、手間や紛失のリスクが軽減され、手続きの簡素化が進みました。
参考:ふるさと納税に係る寄付金控除に関する証明書等について(国税庁)
子育てに関する助成等の非課税措置
国や自治体から子育て支援の助成金を受け取った場合、原則として雑所得として確定申告をする必要がありました。2022年からは所得税、住民税ともに計上の対象外となり、申告書に記載する必要がなくなりました。対象となるのは以下の助成です。
- ベビーシッターの利用料に関する助成
- 認可外保育施設等の利用料に対する助成
- 一時預かり、病児保育などの子どもを預ける事業の利用料に対する助成
これらの助成と一体的に運用される生活援助や家事支援、保育施設などに必要な副食費・交通費なども対象です。
参考:タックスアンサー(よくある税の質問)No.2011 課税される所得と非課税所得 国や地方公共団体が実施する子育てに関する費用の女性等の非課税措置(国税庁)
雑所得に関する規定の明確化
2023年の変更でも取り上げた「雑所得」については、前年の2022年に区分が変更されました。それまでは「公的年金」と「それ以外」の二つの区分だったのですが、「それ以外」の中が「業務に係るもの」と「それ以外」とへさらに区分されました。
この背景には、インターネットが普及し、クラウドソーシングによる原稿作成やデザイン業務、シェアリングエコノミー、不用品の売買、ネットオークション、注文配達プラットフォームの展開など、個人の所有する物質や技術を譲渡または提供して収入を得る多様な業態が誕生し、副業で所得を得る人が増えている一方、課税対象としての扱いが曖昧であったことが挙げられます。
退職所得の課税方法の改正
2022年の申告から、勤続年数が5年以下で退職金が300万円を超える部分については、所得を2分の1に計算する原則が適用されなくなり、短期間で多くの退職金を得ようとする場合は増税になりました。退職所得は、原則として以下の式で計算します。
退職所得の金額
=((源泉徴収される前の収入金額)- 退職所得控除額) ×1 / 2
退職所得控除額:
勤続20年以下:40万円 × 勤続年数(もしくは80万円)
勤続20年超 :800万円 + 70万円 × (勤続年数 - 20年)
参考:タックスアンサー(よくある税の質問)No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)(国税庁)
e-Tax・電子帳簿保存による65万円の青色申告特別控除の適用
青色申告特別控除では、複式簿記による記帳、貸借対照表、損益計算書を添えた確定申告による控除額は55万円となり、10万円を上乗せする要件として次のいずれかを利用する必要があります。
- e-Taxからの送信(電子申告)
- 電子帳簿保存を利用
電子帳簿保存の利用には税務署長の承認が必要でしたが、2022年からは承認が不要になり、その代わりに優良な電子帳簿を保存することと届出書の提出が条件になります。
参考:タックスアンサー(よくある税の質問)No.2072 青色申告特別控除(国税庁)
まとめ
以上、2023年(令和4年所得分)の確定申告の変更点でした!
年々便利になっていますので、把握して臨めば、これまでよりも確定申告がラクに終わる可能性があります。
この記事がみなさまのお役に立てれば幸いです!
他にも当サイトでは、自分で確定申告を終わらせるためのヒントがたくさんありますので、こちらの特集なんかを参考にしつつ、ご自分で節税にチャレンジしてみるのもおススメです。
税理士に任せるのもいいですが、自分でやると税金のしくみがわかって、生活するうえで視点が一つ増えて面白いですよ。
それでは、また!
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