今年も年末調整の時期がやってまいりました。
毎年忙しい時期ではありますが、2024年は定額減税が適用された影響で、年末調整における所得税の計算や書類の変更等の年末調整業務に変更点が発生しています。
例年以上に変更点が多く、また定額減税という従業員のみなさんの所得に影響のでる変更もあるため、年末調整業務担当者としては不安があるかと思います。
本記事では、定額減税を中心とした2024年分の年末調整の変更点や注意事項についてわかりやすく解説します。
年末調整とは
年末調整とは、給与所得者の給与や賞与から毎月概算で徴収した所得税(源泉徴収)と、その年の正確な所得税との差額を計算し、還付や追徴を行う手続きです。
源泉徴収されていた所得税より実際の所得税の方が少なかった場合は差額が還付(返金)され、多かった場合は不足額が徴収されます。
年末調整は11月〜翌年1月にかけて手続きが行われ、従業員は一般的には11月頃に年末調整で必要な申告書や証明書などをそろえて勤務先へ提出します。
年末調整の対象者
年末調整の対象者は以下になります。「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を勤務先へ提出していることが前提です。
年末調整の対象者となる条件を改めて確認していきましょう。
- 1年を通じて勤務している人
- 年の途中で就職(転職)し、年末まで勤務している人
- 年の途中で海外勤務などにより非居住者となった人
- 年の途中で退職し、かつ次の4つのケースにあてはまる人
- 死亡により、退職した人
- 著しい心身障害により退職した人で、本年中に再就職できないと見込まれる人
- 12月中の給与の支払いを受けたあとに退職した人
- パートタイム労働者が退職した場合で、その年の給与総額が103万円以下の人
2024年分の年末調整の変更点
年末調整の申告書や対応内容は、税制改正によって変更点が生じることがあります。
2024年分の年末調整では大きな変更点である定額減税を中心に書類の簡略化、簡素化がされています。
- 定額減税の適用
- 給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書に定額減税に係る記載欄を追加
- 保険料控除申告書の簡素化
- 給与所得者の扶養控除等申告書の提出が簡略化
2024年の年末調整業務の大きな変更点
2024年6月1日から経済政策により定額減税が行われています。定額減税の実施により、2024年の年末調整業務にもいくつかの変更点があります。
既に2024年6月1日時点での定額減税額にて月次減税がされていますが、年末調整の際に改めて2024年12月31日時点の定額減税額で計算しなおし、所得税額の調整を行います。
定額減税とは
2024年6月より1年間実施されている経済政策です。1人あたり所得税3万円+住民税1万円の計4万円が減税されます。また、同一生計配偶者や扶養親族がいる場合はその人数分、同額が減税されます。
たとえば、同一生計配偶者と子(扶養親族)が1人いる場合の所得税の減税額は、対象が3人(本人+配偶者+子)×3万円のため、所得税から9万円控除される計算です。
所得税の定額減税対象者
2024年分の所得税の納税義務者のうち、2024年分の合計所得金額が1,805万円以下(給与収入のみの場合は2,000万円以下)の人が対象となります。
給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書に定額減税に係る記載欄を追加
定額減税にあたり、「給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書」に「定額減税に係る記載欄」が追加されています。定額減税の対象となる場合はこの申告書で年調減税の申告をします。
変更箇所は下記の赤マーカー部分です。
(引用元:国税庁HP「令和6年分 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 年末調整に係る定額減税のための申告書 兼 所得金額調整控除申告書」©国税庁)
本人分の定額減税の申告は 「給与所得者の基礎控除申告書」で計算した区分Ⅰが(A)~(D)に該当する場合、本人定額減税対象の欄にチェックを付けて申告します。
配偶者分の定額減税の申告は、本人定額減税対象の欄にチェックがついており、「給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 年末調整に係る定額減税のための申告書」の区分Ⅱが①または②に該当する場合は配偶者定額減税対象にチェックを付けて申告します。
「給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書」の記載例についてはこちらをご覧ください。
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/pdf/2024bun_07.pdf
その他年末調整業務に関する変更点
2024年の年末調整では、保険料控除申告書や給与所得者の扶養控除等申告書の提出が簡素化されました。
従来の申告書から削除された項目が存在するので、変更点を事前に確認しミスがないように年末調整の準備を整えましょう。
保険料控除申告書の簡素化
保険料控除申告書の様式について、続柄の記載欄が削除されました。
引用元:国税庁HP「令和6年分給与所得者の保険料控除申告書」©国税庁
- 生命保険料控除:保険金等の受取人欄のうちの「あなたとの続柄」欄
- 地震保険料控除:保険等の対象となった家屋等に居住又は家財を利用している者等の氏名に係る「あなたとの続柄」欄
- 社会保険料控除:保険料を負担することになっている人欄のうちの「あなたとの続柄」欄
給与所得者の扶養控除等申告書の提出が簡略化
源泉徴収手続きの簡素化を目的として、給与所得者の扶養控除等申告書の提出が簡略化されました。
2025年1月1日以後に提出する「給与所得者の扶養控除申告書等申告書」について、前年の申告内容から記載すべき事項に変更がない場合は、下記のように異動がない旨を記載した申告書(簡易な申告書)を提出することができるようになりました。
(引用元:国税庁HP≪記載例≫令和7年分扶養控除等(異動)申告書(簡易な申告書))
ただし、簡易な申告書で提出できるのは、次のチェックリストのいずれにも該当しない場合のみで、1つでも該当するものがあれば、通常通り、申告書に必要事項を全て記載して提出します。
(引用元:国税庁HP「扶養控除等申告書の提出について」)
※これは、「令和7年分 扶養控除(異動)申告書」から適用されます。
- 「控除対象扶養親族」に該当する人の年齢が17歳→18歳となる場合
- 「源泉控除対象配偶者」の前年の所得の見積額が30万円(給与収入 85万円)から 40万円(給与収入 95万円)となる場合
※年を跨ぐことによる扶養親族の年齢や年収の変動については、区分に変動がなければ記載すべき事項に変更がないとみなされます。
まとめ
いかがだったでしょうか?
もう一度重要ポイントをまとめますと、
2024年分の年末調整の変更点は大きく分けて「定額減税」「保険料控除申告書の簡素化」「給与所得者の扶養控除等申告書の提出簡略化」の3点です。
2024年の年末調整は、定額減税の導入により例年以上に複雑になることが予想されます。
特に定額減税については従業員のみなさんの所得税に大きく関わる変更点になります。
企業の経理担当者においては新しい手続きに対応するための準備を怠らないようにし、従業員のみなさんにおかれましては、早めに必要書類を準備しましょう。
この記事が年末調整業務の一助となれば幸いです。
それでは、また!
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