「自宅を事務所として活用し経費にできないか?」と、多くのフリーランス、小規模事業者、そして自宅で業務を行う個人が考えることだと思います。
しかし、この選択を行う際には、税務上の取り扱いを理解し、適切な方法で行うことが重要です。
この記事では、自宅を事務所にして経費にする方法、税務処理、その際に考慮すべき法人と個人事業主の違いについて解説します。
自宅事務所やSOHOの経費化の基本
自宅の一部を事業用として使用する場合、その部分にかかる費用は経費として計上することができます。
これには家賃、光熱費、インターネット使用料などが含まれます。
しかし、全ての費用を100%経費としてはいけません。
事業用と私用の割合に応じて経費を按分する必要があります。
自宅関連の費用で経費として認められるものは?
経費として計上できる自宅事務所に関連する費用には、以下のようなものがあります。
- 家賃や住宅ローンの利息(事業用の部分に応じた割合分)
- 光熱費(水道、ガス、電気など)
- 通信費(インターネットや電話)
- 事務所用品や備品の購入費
- 修繕費
- 固定資産税や償却資産税(事業用の部分に応じた割合分のみ)
- 火災保険料(事業用の部分に応じた割合分のみ)
- 車両代、ガソリン代、自転車代(業務使用分に応じた割合分のみ)
これらの費用を経費として計上するためには、業務用と私用の割合を適切に計算し、記録をしっかりと保管する必要があります。
一度は読みたい!国税庁の「タックスアンサー No.2210 必要経費の知識」
自宅事務所に関連した費用を経費化する際には、国税庁の「タックスアンサー No.2210 必要経費の知識」に記載されている情報が役立ちます。
このガイドは、自宅事務所やSOHOを運営する個人が経費として計上できる項目とできない項目を理解するのに必要な基礎知識を提供しています。
(参考:「タックスアンサー No.2210 必要経費の知識」】©国税庁)
重要なポイントを簡潔にまとめると次の通りです。
必要経費に算入する場合の注意点
1. 家事関連費用の取り扱い
家事上の費用は原則として必要経費になりませんが、業務上と家事上の両方に関連する費用(例: 店舗併用住宅にかかる費用)は、業務遂行上直接必要な部分が明確に区分できる場合、その区分できる金額のみが必要経費となります。
2.必要経費になるものとならないものの例
・家族への家賃や給与の支払い
生計を一にする家族への地代家賃は必要経費にならず、同様に家族への給与賃金も必要経費にはなりません(ただし青色事業専従者給与として支払う場合は経費として認められる)。
(参考:「タックスアンサー 青色事業専従者給与と事業専従者控除」©国税庁)
・住宅ローンの利息
住宅ローンの利息のうち業務のために使う部分相当は必要経費となります。なお住宅ローンの元本部分は経費にはできません。
・資産の修繕や除却費用
業務用資産の修繕に要した費用は、一定の条件下で必要経費になります。
・事業税と固定資産税
事業税は全額必要経費となりますが、固定資産税は業務用部分に限ります。
・そのほか経費とならないもの
所得税や住民税、罰金、科料、過料、公務員への賄賂などは必要経費にはなりません。
国税庁のガイド「タックスアンサー No.2210」は、自宅事務所の経費化に関する疑問に対して具体的な指針を提供しています。
自宅事務所やSOHOを運営するすべての方にとって貴重な指針となるので、是非一読してみてください!
法人として自宅事務所を経費化する場合の注意点
法人が経営者の自宅を事務所として経費化する際、自宅が「持ち家」or「賃貸」のどちらにあたるかで注意点が違います。
それぞれみていきましょう。
経営者の自宅が持ち家の場合
法人が経営者の「持ち家」を事務所として使用し、家賃を経費化する場合、特に注意すべき点があります。
経営者が法人から受け取る家賃や住宅ローンの利息(事業用の部分に応じた割合)は、経営者にとって不動産所得となります。
自宅が経営者の所有物件である場合、これは不動産収入として扱われます。この収入に対しては所得税が課されるため、経営者側で節税対策として家屋の減価償却費や固定資産税、借入金の利子などを経費として計上することが重要です。
経営者の自宅が賃貸の場合
一方、経営者の自宅が「賃貸」の場合は、経営者が支払う家賃と会社からの家賃収入が相殺されるため、不動産所得は生じません。この点は、自宅を事業用に利用する際の大きな違いとなります。
個人事業主の場合の自宅事務所の経費化
個人事業主が自宅を事務所として経費化する際にも、自宅が「持ち家」or「賃貸」のどちらにあたるかで注意点が違います。
それぞれみていきましょう。
個人事業主の自宅が持ち家の場合
個人事業主の自宅が「持ち家」の場合、家賃が発生しないため、家賃として経費計上することはできません。
ただし、所有する建物自体を減価償却費として計上することが可能です。
また、固定資産税や住宅ローンの金利、管理費、火災保険料など、自宅を所有していることで発生する費用は、事業の使用割合を掛け合わせて経費として計算できます。
個人事業主の自宅が賃貸の場合
一方、個人事業主の自宅が「賃貸」の場合は、支払っている家賃のうち事業に関連する部分の家賃を経費計上することが可能です。
この場合も、使用する部分の面積や時間に応じて経費を按分する必要があります。
個人事業主にとっては、自宅の事業用部分にかかる経費を計上することで、事業所得を適正に抑え、税負担を軽減することができます。
申告時に自宅事務所の経費化でおさえるべき3つのポイント
最後に、申告時に自宅事務所を経費化する際は、もし税務署が調査に来ても根拠をもって説明できるように以下の3つのポイントを必ず押さえてください。
1. 適切な按分率の設定
自宅のどの部分を事業用として使用しているか、その割合を明確にし、経費を適切に按分します。
2. 経費の詳細な記録
事業用に使用している部分の家賃、光熱費、修繕費などの支出を詳細に記録し、必要に応じて税務申告の際に提出できるようにします。
3. 法的要件の確認
自宅事務所を設ける際は、地域の条例や建物の規約など、法的な要件を確認し、問題がないことを確認します。
まとめ
いかがでしたか?自宅事務所の経費化は、節税対策として有効な方法です。
しかし同時に導入には注意も必要です。
特に法人として自宅を事務所にする場合は、経営者個人の不動産所得が発生するため注意が必要です。十分に事前検討をして計画的に自宅事務所を活用して節税をしましょう。
正しく運用すれば、仕事もスムーズに、かつ税金もお得になりますので、是非導入をチャレンジしてみてください。
その際に、この記事がお役に立てれば幸いです。
それでは、また!
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