どうも、こんにちは。
そういえば、縄文会計の中村さんってベンチャー企業の役員してるんですよね?
ということで、今回はその引き出しを開けます!
今回はオススメの資金調達『少人数私募債』について!
いきなりマイナー気味の資金調達ですが、コレが使えるんだから紹介しない手はない。
この記事では、少人数私募債の条件と募集要項の決め方、メリット・デメリットを解説していきます。
さらに、募集要項のひな形も掲載します。
なので、少人数私募債の発行から償還までの流れと注意点を理解して、資金調達に活用してみてください!
社債という資金調達方法(融資との違い)
社債とは、会社が投資家から返済義務付きの借金をして資金調達することです。
よく使われる「融資」と違うのは銀行でなく「投資家」から資金調達をすることにあります。
投資家から資金調達するという面では株式と似ていますね。
社債と株式の違い
もう一つ資金調達方法として株式による出資がありますが、社債と株式は異なります。
投資家から資金調達をするという意味ではとても似ていて、これを直接金融といったりします。
ですが、相違点もあります。
株式は、投資家から返済不要の出資をしてもらう代わりに、株主として経営に参画する権利を与えるのですが、社債は返済が必要であり、経営に参画する権利はない点が最も大きな違いです。
株式は配当があり、社債は融資のように利息という形で対価を支払う点にも違いがあります。
そういう意味では社債は、株式と融資の中間みたいな感じです。
少人数私募債とは「社債の一種」
少人数私募債は、その中でも「縁故債」とも呼ばれる社債です。
最も大きな特徴は、限られた人数と一定の条件内で発行する社債であること。
公募債発行や銀行からの融資で資金調達が難しい中小企業やベンチャー企業向きの社債として注目されています。
公募債と私募債
社債は、引受人の募集方法によって「公募債」と「私募債」に分かれています。
公募債
金融機関を経由して、不特定多数から募集を図る社債
私募債
発行する会社の関係者限定で募集を図る社債
私募債の種類は、少人数私募債、プロ私募債、疑似私募債があります。
その中でも、少人数私募債は、最小限の費用と簡略化された手続きで社債発行が出来るため、中小企業や起業時の資金調達として活用する企業が増えています。
少人数私募債の条件
では、少人数私募債の発行条件をみていきましょう。
- 法人であること
- 社債購入を勧誘する対象者の人数が 50 名未満であること(適格機関投資家を除く)
- 社債総額を1口の金額で割った口数が 50 未満であること
- 少人数私募債に譲渡制限を設けること(多数の者に譲渡される恐れを少なくすること)
- 告知をしない場合、発行総額を1億円未満にすること
それでは、詳細を解説していきます!
法人であること
少人数私募債は、資本金や資産規模、事業規模等に関係なく、法人格の会社が発行可能です。
少人数私募債が発行できる法人
株式会社、特例有限会社、合同会社、合資会社、合名会社
勧誘は50名未満に限定
少人数私募債の勧誘は、会社の関係者を対象に、声掛けベースで50名(50社)未満=49名までに限定されます。
会社関係者とは、会社の社長・役員・従業員本人とその親族や知人、オフィスのオーナー、取引先や地域住民などが該当します。
※注意点:引受先に金融機関などの適格機関投資家(プロの投資家)を勧誘すると、プロ私募債や公募債と判断されて手続きや費用が大きく変わるので要注意です。
一口の最低額が発行総額の50分の1以上
少人数私募債は、発行総額を一口の金額で割った口数が「50未満」で発行することが条件です。
例
「発行総額4900万円」÷「一口100万円」=49<50
譲渡制限を設けること
少人数私募債は、発行後も勧誘人数&引受人の50名未満を維持しなければなりません。
そのため、少人数私募債の募集・発行時に必ず譲渡制限があることを引受人に伝えます。
伝え方は、募集要項に「会社の承認を得ずに譲渡はできない」や「一括譲渡以外の譲渡を禁止する」などの譲渡の条件を記載すればOKです。
そうすれば仕組みとして人数は増えません!
少人数私募債のメリット3つ
少人数私募債のメリットはたくさんありますが、大きな3つのメリットについて書いていきます!
1:最小限の発行費用と簡略化された手続き
少人数私募債のメリットは、公募債の発行よりも最小限の発行費用と手続きが簡略化されている点です。
公募債では義務になっている次の項目が、少人数私募債では不要になります。
- 保証人や担保
- 社債管理者の設置
- 有価証券届出書など公官庁への書類提出
- 社債券の発行
また、少人数私募債は「自社で発行から償還まで行う=私募」のため金融機関への手数料や社債管理者の費用も発生しません。超お得!
2:引受人が納得すれば自由に設定できる
少人数私募債は、引受人が納得すれば償還期限や利率、金額などが自由に設定可能です。
ただし、自社の無理のない資金繰りを見極めて検討しましょう。
詳細は「少人数私募債の募集要項の決め方」の章で解説します。
3:月々の返済がない
少人数私募債は、借入融資のような「月々の返済」がありません。
償還期限や年数回の利息支払いまで猶予があるので、月々の返済へのプレッシャーが少ないのがメリットです。
キャッシュポイントの底上げに一役買います!
その他のメリット
- 実質的な金利が抑えられる
- 審査が不要
- 金融機関からの信用力UP
- 融資の保証枠を残して置ける
- 信用保証協会への保証料が不要
- 利息を損金(経費)にできる節税効果
- 経営意識の向上
- 有価証券届書または有価証券報告書が不要
- 場合によっては補助金の支給もうけられる
少人数私募債の唯一のデメリット「一括償還の負担が大きい」
少人数私募債の場合、満期に一括償還の負担が大きいことがデメリットです。
万が一、事業が軌道に乗らず、償還期限に資金が足りない場合を想定した計画を立てておくことが大事です。
具体的には「償還期限の延長を申し出る」「銀行借入を行う」「別の社債や融資、株発行などを行う」などの対策を決めておきます。
少人数私募債の発行から償還までの流れ
【準備】1:事業計画・募集要項などを作成 | 資金調達の目的・募集要項の調整・勧誘に必要な資料の作成 |
2:少人数私募債発行の決議 | 取締役会、もしくは株主総会で決議する |
3:少人数私募債の勧誘スタート | 個別訪問による勧誘、または説明会を開催 |
4:社債申込証の作成・受付 | 社債引受人見込み者へ社債申込証の作成・送付・受付を行います |
5:社債引受人の審査 | 慎重な審査を心掛け関係者以外の例外を作らないようにしましょう。 |
6:発行総額の確定・募集決定通知書の送付 | 申込を締め切り、金額確定。募集決定通知書を送付 |
7:申し込み金額の受領・社債振込金預り証の送付 | 引受人からの入金を確認・社債振込金預り証を送付 |
【発行後】8:社債原簿の作成・管理 | 満期償還まで社債の管理、事業計画を進める |
【発行後】9:利息の支払い | 期日に振込み、振り込み前に「支払通知書」送付 (源泉所得税の差し引き、後日の納付&支払調書の作成もお忘れなく) |
【発行後】10:満期償還 | 各引受人に元金を一括返済して、少人数私募債の全てが完了 |
少人数私募債発行には決議が必要(会社法の要件)
少人数私募債の発行には、取締役会決議が必要です。(取締役会非設置会社は、株主総会で少人数私募債発行の決議を行います)
また、少人数私募債の発行を決議した際の議事録は証拠として、10年間保存をします。
社債券発行は不要
少人数私募債に社債券発行の義務はありません。
また、購入者は「社債振込金預り証」が社債を保有している証拠になるので、社債券発行は不要です。
社債原簿で厳重に管理する
少人数私募債の管理台帳は、基本的に社債原簿だけなので紛失・破損・劣化に気を付けて金庫等で厳重に管理しましょう。
少人数私募債の募集要項の決め方
続いて、募集要項を決めていきます。
資金調達額
少人数私募債の商品設計で最初に決めるのは、①「資金調達の目的」と②「目的達成に必要な資金調達額」です。
勧誘人数と必要な資金調達額から、募集総額と1口の金額を決めていきましょう。
少人数私募債の勧誘は「最大49名」であって、額によっては2・3名からの資金調達を少人数私募債で行うケースもあります。
購入見込者にヒアリングしてみる
事前に購入見込みのある関係者を探して、ヒアリングをしてから募集要項を調整することがお勧めです。
というかココが肝です。内々に決まってしまえば少人数私募債の発行はほぼみえます。
ちなみに勧誘を自社のウェブサイトやSNS、新聞や雑誌等での勧誘はゼッタイにしないでください。不特定多数の勧誘となり、「私募」でなく「公募」に該当するので費用と追加の手続きが多大にかかります!
1口の金額
1口の金額は、上限が49口なので「資金調達額/49=1口の金額」で計算します。
1口額の計算例
1口の額が「100万円」→最大資金調達額は「4.900万円」
1口の額が「200万円」→最大資金調達額は「9.800万円」
1口の額が「300万円」→最大資金調達額は「9.800万円」
※ただし発行総額は1億円以上にならないように!(公募になって追加費用と手続きが発生します)
利率
少人数私募債の利率は、自由に設定できます。
自社と引受人の双方にメリットがある利率として2.0%~5.0%が一般的です。
発行する企業側も、銀行融資やビジネスローンより金利を高く設定すると少人数私募債で資金調達するメリットがありません。
事業計画で予想利益を計算して、自社の状況と引受人の意向に合わせた利率を設定しましょう。
- 大手企業の社債(公募債):年率2.0%
- 少人数私募債:年率2.0%~5.0%
- 銀行融資やビジネスローン:年率5.0%~15.0%
利息の支払い回数
少人数私募債の利息の支払い回数は自由に設定が可能です。
支払い業務の手間と振込手数料から「年1回」がオススメですが、2回や3回に設定する会社も多いです。
償還期間
少人数私募債の償還期間も自由に設定が可能です。
資金調達の目的が、運転資金であれば1~3年、設備資金であれば3~5年という基準で検討しましょう。
少人数私募債「募集要項」ひな形
株式会社 第 回少人数私募債(●●●●ファンド)募集要項
1.会社の商号 株式会社 ●●●●● 2.社債募集総額 金 ●●●●●万円 3.社債の種類 無担保少人数私募債(なお、社債券は不発行とする。) 4.社債の金額 1口金 ●●●●●万円 5.社債の利率 年 ●●●●● % 6.発行価額 額面どおり 7.償還金額 額面どおり 8.社債償還の方法及び期間 元金は●●●●年●●月●●日にその金額を償還する。ただし、当社は何時でも申し出のあった社債権者所有の全部を繰上償還することができる。 9. 利息の支払い方法日及び期間 利息は発行日の翌日から償還期間までこれをつけ、毎年●●●●年の年●回経過分を支払う。ただし、●年に満たない場合は日割り計算とする。 10. 中途換金(解約)の方法及び利率 社債権者は、満期日前に所有の全部を取締役会の承認を受けた上で、換金解約することができる。ただし、●●●●年●●月●●日以前に解約した場合の利率は、年●●%とし、●●●●年●●月●●日に支払われた利息との差額は、換金される額より控除されるものとする。 11. 第三者譲渡の方法及び譲渡制限 社債権者は、満期日前に所有の全部を第三者に売却譲渡する場合は、取締役会の承認を受けるものとする。なお、一括譲渡以外の方法で譲渡することはできない。譲渡価格は利息の付される経過期間を考慮して、当事者間の合意によって決定するものとする。名義変更手数料として金●●●●円を申し受ける。 12.券面分割制限 券面表示額の単位未満に券面を分割することができない。 13.元金支払方法 当社本社において社債原簿に記載されている社債債権者へ支払う。 14.社債元利請求権の時効 社債の償還請求権は10年を経過するときは時効に因って消滅する。利息の請求権は5年を経過するときは時効に因って消滅する。 15.申込期間 ●●●●年●●月●●日より同年●●●●年●●月●●日までとする。ただし、申込額が募集額に達したときは期間中であっても、申込を締め切ることができる。 16.募集方法 直接募集 17.払込期日 ●●●●年●●月●●日まで 18.発行日 ●●●●年●●月●●日 19.振込銀行 ●●銀行 ●●支店 普通預金No.●●●●
口座名義人20.申込取扱い場所 ●●株式会社
少人数私募債の注意点
少人数私募債の発行について財務面、手続き面での注意点がいくつかあります!
少人数私募債は「負債」(財務面)
少人数私募債を含め社債は、株式のような資本ではなく、負債による資金調達です。
社債の発行は債務が増えることであり、当然返済義務があるので資金調達後の返済計画を重視して実行しましょう。
特に少人数私募債は、会社関係者から資金調達を行うため「信用と信頼」が重要です。
資金を活用しても利益を出せず「利息」や「償還」が滞れば、トラブルや信頼失墜につながり、事業継続が困難になるので慎重に検討しましょう。
(※延長の手続きもできるので、先を見越して早めに打ち合わせましょう)
少人数私募債の募集総額は1億円未満で(手続き面①)
少人数私募債の1回の募集総額に上限はありません。
ただし、少人数私募債であっても発行総額が1億円以上になると、公募債と同等の手続きと管理義務、また発行費用が発生します。
これが事実上の上限。
少人数私募債のメリットである「最小限の発行費用と手続きの簡略化」を考えるなら、発行総額を1億円未満にすることをおすすめします。
短期間に別の社債を発行する場合(手続き面②)
短期間に何度も別の社債を発行することは可能です。
しかし、6か月以内に発行する利率と償還期限が同じ社債は、同一のものとみなされます。
別の少人数私募債を6か月以内に発行する際は「利率と償還期限」を変えないと、勧誘人数など条件が合算されるので注意しましょう。
まとめ
以上、少人数私募債について解説しました。
少人数私募債の発行は、自社に合った自由度の高い条件を設定でき、財務面ひいては企業経営に余裕をもたせることのできる資金調達方法です。
自由度が高いからこそ考慮すべき点もありますが、しっかり理解して使いこなせば大きな武器となるはずです!
しかし、少人数私募債はあくまで負債なので、発行の際は自社にとって必要な額や償還方法などを明確にしてから実行しましょうね。
それでは、また!
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