株式、FX、いろんな投資を経験されてきた方は、経験則的に税金に詳しくなることも多いです。
先日ゴリゴリの投資経験をもつ友達から、こんなことを聞かれた。
株式の譲渡は譲渡所得ですけど、仮想通貨は雑所得なんですね。
譲渡所得の分離課税の方が有利だって聞いたことがあるんですけど・・・
タジタジになりながらも、なんとか対応したけど、今日はそこら辺解説します!
(※今回長くなるので、結論だけ知りたい人は『まとめ』の部分をお読みください)
2022年現在:暗号資産(仮想通貨)投資で得た所得は「雑所得」
2022年現在、暗号資産(仮想通貨)で得られた利益は原則、”雑所得”となります。
とはいえ、ここら辺は毎年議論にもなっているのが事実である。
それは業界団体がそれはそれは、毎年働きかけを行ってくれているから!
結果ご覧の通り。
毎年のように何かしらのカスタマイズを経ながら、その取扱いは変わり続け、毎年執務の参考とされたがっている…
そこで明確に、
原則として雑所得に区分されます!
と書かれている以上、原則雑所得なのである。
でも、この雑所得が課税の計算上不利だと言われているのだよね。
雑所得は課税の計算上不利?
じゃあ一体なぜ、不利になるのか見ていこう。
その前に、税金の計算方法を簡単に知ってほしい。
総合課税と分離課税
所得の種類によっては他の所得と合算せず独自の税率をかかる『分離課税』と、他の所得と合計してその所得応じて税率をかける『総合課税』があります。
この総合課税である点が不利となる大きな原因になるのだ。
なぜなら、所得税の総合課税の税率は所得が大きくなるにつれて高くなるからだ。累進課税という言葉を聞いたことのある人も多いでしょう。
高額所得者ほど高い税率が課されるという課税方式なんです。
場合によっては利益の半分近くが税として取られてしまう可能性もあるほど。
故に、暗号資産(仮想通貨)は税金上不利だといわれてしまうのだ。
一方、株式などの他の投資は課税のされ方が実は違う!
他の投資の課税方式
株式などの他の投資は譲渡した場合に、分離課税という仕組みをとります。
どいういう仕組みかというと、譲渡した差益について一律の税率で課税されるかたち。
その税率は所得税15%住民税5%(これに復興特別所得税が0.315%加わる)
一方、総合課税の場合その税率は最大で45%にも及ぶ!
暗号資産(仮想通貨)の利益が雑所得とされる現状は、他の投資に比べて不利になりやすいといえるのだ。
しかも、残念ながら所得にかかる税は所得税だけではありません。地方税として住民税も納める必要があります。こちらは一律10%です。さらに、2037年まで復興特別所得税がかかるため税率は1.021倍になります。どひゃー
金融商品の税制に比べると雑所得扱いは不利
暗号資産以外の投資商品ならば雑所得より有利な税制が他にもある。
その一つが損益通算。
株式や投資信託の売却で損が出ても、他の金融商品で得た利益との間で赤字と黒字を相殺することができるの制度
つまり、損益通算をすれば課税対象額が低くなり、節税になる(ただし一定の手続きは必要)。
さらに、もう一つ繰越控除。
その年の損益通算で赤字が解消できなければ翌年以降最長3年間赤字を繰り越せる制度
これまた、節税の仕組みが用意されている。
ちなみに、雑所得のFXはこのグループには含まれないが、FXや、他の「先物取引に係る雑所得等」の損益通算と繰越控除は認められています。
しかし、同じ投資でも、暗号資産(仮想通貨)には分離課税も損益通算も繰越控除もありません!この面でも他の投資対象と比較して税制面で不利なのが現状です。
金融商品の税制を考慮して課税が変わる可能性も?
マジ仮想通貨、不遇。
って思った方は多いでしょう。
しかし、実は税金の制度は変わることがある。
歴史上、金融商品の中でも、先ほどの総合課税が分離課税に変わったり、損益通算や繰越控除ができるようになった事例は結構あるのだ!
総合課税⇒分離課税の対象となった金融商品たち
株式や投資信託
株式や投資信託などの金融商品が分離課税の対象となり、損益通算や繰越控除ができるようになったのは比較的最近なのだ。
現在のように債券、投資信託、株式などの利益を分離課税で損益通算及び繰越控除が適用されたのは2016年以降。
もともと、株の売買益は昭和28年から平成元年までは原則非課税だったし、公社債、公社債投資信託の売買益も非課税だった。
FX
FXについても2012年の4月以降総合課税から分離課税となり、FXやその他の先物取引の損益とも損益通算ができるように税制が変わりました。
配当
配当課税は戦後総合課税のみで、昭和40年に源泉分離課税が選択できるようになってもしばらくは条件がついていた。
金融商品の税制の歴史的な動き
といった感じで金融商品の税制は、徐々に実現してきた経緯があります。
近年では、少子高齢化で貯蓄率が下がり、さらに日本人は株式や投資信託などの投資を敬遠しがちなことを鑑みて、政府が経済活性化のために家計に対して「貯蓄から投資へ」と呼びかける政策をとってますよね。
そんなこんなで、税制でも「金融商品間の課税の中立性」「簡素で分かりやすい税制」「一般の個人の投資リスクの軽減」を目指して、20%の分離課税と損益通算と繰越控除のように投資環境が整備されてきたわけです。
このように経済政策やその時々の現状にふさわしいように改正されてきた流れがありますから、暗号資産(仮想通貨)についても同じような変化を迎えることはありえるでしょう。
暗号資産(仮想通貨)投資の税率改正の動き
実際に「日本暗号資産取引業協会」から金融庁に出されている要望の、主なポイントは以下の3つとなっています。
- 税率20%の申告分離課税の適用
- 譲渡損失の損益通算と繰越控除の適用
- 少額決済の非課税化
それぞれ見ていきましょう。
①税率20%の申告分離課税の適用
株式や投資信託と同様に、税率20%の申告分離課税を適用する。
②譲渡損失の損益通算と繰越控除の適用
暗号資産取引で譲渡損失が発生した場合に、株式や投資信託、特定公社債等の譲渡益との損益通算を可能とし、損益通算後も残った損失については翌年以降3年間にわたっての繰越控除を可能とする。
③少額決済の非課税化
買い物の代金を支払うケースなど、少額決済を暗号資産で行った場合に生じる所得については課税対象から除外する。
といった感じです。
しかし、上記がまだ税制に組み込まれていないのも事実。
一体なにが、妨げとなっているのでしょうか?
税を徴収する側、国の抱える争点
国は以下の争点を抱えています。
暗号資産(仮想通貨)は、金銭か?外貨か?財産か?
①暗号資産(仮想通貨)は通貨なのか?
そもそも暗号資産(仮想通貨)は通貨なのでしょうか。
法的には通貨とは強制通用力があるものを指します。現状、支払い時に相手が暗号資産を受け取らなくても問題はなく、法的には通貨ではありません。
一方、経済学では、価値のあるモノとの交換に使えること、異なるモノの価値の尺度となること、その価値を貯蔵できることの3つの機能を有するものを通貨と考えます。
暗号資産(仮想通貨)は、これらの機能はある程度満たしているといえるでしょう。また、本来は支払い手段として生まれ、法的根拠がなくとも支払いに用いることも可能なので部分的ながら通貨の機能も果たしています。
②暗号資産(仮想通貨)は外貨なのか
では外貨と比べるとどうでしょうか。暗号資産(仮想通貨)はどの国の法定通貨でもないので外貨には当てはまりません。ただ、円貨との売買差益が生まれる点は外貨建て取引に似ています。
③暗号資産(仮想通貨)は財産なのか
それでは資産でしょうか。資産は経済的価値があるものを指します。
ただし、税の世界では、現金そのものは値上がりも値下がりもしないので資産とは考えません。外貨そのものも円に換算した価値を測ることができるので円貨に準じて資産にあたらないとされます(ただ、為替の変動で得た差益は「雑所得」として課税されます)。
また、完全にモノとして扱うなら、その売買には消費税がかかることとなりますが、諸外国でも日本でも消費税はかからないという扱いになっています。
この点純粋な資産とは扱いが異なるものの、通貨や外貨以外の価値のあるモノなので資産であるとはいえます。
改正資金決済法の前後の出来事
暗号資産(仮想通貨)とは何か?論争について一定の回答となるものがでてきます。それが2017年の改正資金決済法です。
①改正資金決済法とは?
この法改正自体は、利用者保護などのために暗号資産(仮想通貨)の取扱業者を規制するもので、直接暗号資産について法的地位を与えるものではありませんでした。
この法律の中で暗号資産は、モノやサービスの購入する際に「代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値」であり「本邦通貨及び外国通貨ならびに通貨建資産を除く」とされています。
②暗号資産(仮想通貨)と消費税
また、この前後に暗号資産(仮想通貨)に消費税をかけるかどうかが問題となっていました。
2017年7月までは主要国(G7)の中で唯一日本だけが消費税を課していたが、改正資金決済法で暗号資産が支払い手段と位置付けられたことと、諸外国の課税関係を考慮して消費税が非課税となりました。
2017年12月には国税庁が「暗号資産(仮想通貨)に関する所得の計算方法等について」を発表し、2022年現在の雑所得としての課税が定まりました。
③「マウントゴックス事件」後の法整備
暗号資産(仮想通貨)が誕生したのは2009年にビットコインの最初のブロックが作成されたときといえます。2014年には当時最大級のビットコインの取引所であったマウントゴックス社が破綻する、いわゆる「マウントゴックス事件」が起きました。
それを受け法整備が進められたことで、利用者は2017年前後から大きく増えました(一般社団法人日本暗号資産交換業協会「暗号資産(仮想通貨)取引についての現状報告 平成30年4月10日」)。
改正資金決済法前後で暗号資産(仮想通貨)に係る消費税の扱いが変わるなど、急激な変化に国自体もまだ戸惑っている様子がうかがえます。既存の金銭、外貨、資産との異同を踏まえ、国外の動きをにらみながら税制その他の法整備を図っている段階なんです。
今後の暗号資産(仮想通貨)の税制は?
現在、暗号資産(仮想通貨)は支払い手段というより投資の対象とされることが多くなっています。なので、他の投資と同じく分離課税にしてほしいと思う人も多いでしょう。
また、暗号資産が広まることがブロックチェーンの技術を含めフィンテック(FinTech)の活性化につながる見解からも、税制を含めまだまだ議論は尽きません。むしろ拍車がかかるレベル。
国会でも既に取り上げられており、政府も慎重な見解を示していますが、今後も争点となるでしょう。
確定申告の問題
さらに暗号資産については納税上の問題も残っています。
自分で確定申告を行う必要がある
将来的に税制が変わる可能性があるかもしれませんが、現時点では暗号資産(仮想通貨)で得た利益は雑所得で総合課税です。誰も源泉徴収してくれないので自分で税務署に対し確定申告を行う必要があります。
サラリーマンの方だと勤め先企業からもらった源泉徴収票を基に給与所得について申告書に記入したうえで、暗号資産(仮想通貨)での利益を加えて課税所得金額と納税額を申告することになります。
ただ、雑所得も含め給与所得以外の所得が20万円以内であれば、所得税については確定申告をしなくてもよいことになっています。
これは、国税庁の定めで給与所得者が源泉徴収以外に確定申告する必要があるのは「給与所得や退職所得以外の所得金額(収入金額から必要経費を控除した後の金額)の合計額が20万円を超える人」としているからです。ただし、住民税についてはこの限りではなく、別途申告が必要となります。
独特の計算書「暗号資産の計算書」もつくらなければならない
さらに確定申告に際し、「暗号資産の計算書」もつくらなければなりません。
👇こういうやつ。
具体的なやり方はコチラの記事に任せます。
まとめ
いかがだったでしょうか?
長々と書いてきましたが、コラム的に楽しんでいただけると幸いです!
まとめると・・・
- 暗号資産(仮想通貨)は雑所得で総合課税で累進課税
- 他の投資は分離課税で税率が一定のものが多い
- 譲渡損失の損益通算と繰越控除がない
- なので、他の投資に比べて不利
- だけど、歴史的にも状況が改善する可能性はある
といったところです。
暗号資産(仮想通貨)という投資から得た利益は、現在のところ雑所得とされ、総合課税となります。今後の展開次第では税制が変わる可能性もありますが、他の金融商品への投資に比べると不利な扱いといわざるを得ません。
とはいえ、ぶつくさいっても仕方ありませんね。
20万円を超える利益があれば期限までに確定申告をしっかりやりましょう。
暗号資産(仮想通貨)の確定申告のやり方は下記を参考にしてください!
ちなみに、遅れるとさらに税負担が重くなるので確実に納税まで行ってくださいね!
バレないから大丈夫とかはなしですよ!
それでは、また!
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