本記事では、リース取引の中小企業会計指針に基づく処理を、中小企業の定義から始め、所有権移転外ファイナンス・リース取引の賃貸借処理の方法、未経過リース料の注記が不要となる場合、そして消費税の処理について解説します。
これらのポイントを押さえることで、経理・税務に携わる皆様の実務におけるリース取引の会計処理の参考になれば幸いです。
中小企業のリースに係る会計処理のポイント
リース取引の会計処理は原則、『リース会計基準』に従うこととなりますが、中小企業(※)については『中小企業会計指針』により「所有権移転外ファイナンス・リース取引は賃貸借処理が可能」とされています。
では、まず中小企業の定義を見ていきましょう。
中小企業の定義
※中小企業とは、次の法人以外を指します。
- 金融商品取引法の適用を受ける会社(注1)ならびにその子会社および関連会社
- 会計監査人を設置する会社(注2)およびその子会社
(注1)上場会社、社債・CPなどの有価証券発行会社、株主数が500以上の会社
(注2)会社法上の大会社(資本金が5億円以上、もしくは負債総額が200億円以上の株式会社)、および任意に会計監査人を設置する会社
所有権移転外ファイナンス・リース取引は賃貸借処理できます。
「中小企業の会計指針」における、リース取引に関する要点は次の通りです。
所有権移転外ファイナンス・リース取引は、通常の売買取引に係る方法に準じて会計処理を行います。
ただし、通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行うこともできます。この場合は、重要性のないリース取引を除き、未経過リース料を注記します。
実務的にも中小企業の会計上、通常の賃貸借取引に準じた処理をしているところが多いと思います。
ただし、法人税法上は、会社態様に関わらず、すべての所有権移転外ファイナンス・リース取引が売買として取り扱われ、賃借人がリース料(賃借料)として経理をした場合においても、その金額は減価償却費として取り扱われます。
(※ただし、リース期間均等でのお支払いの場合、この金額と減価償却限度額が一致するため、税額調整不要となります。)
また、リース料を賃貸借処理した場合には、重要性のないリース取引を除き、未経過リース料の注記が必要となっています。
この重要性のない場合=未経過リース料の注記が不要となる場合は、どのような場合かみていきましょう。
未経過リース料の注記が不要な場合
次の1・2・3・4いずれかに該当するオペレーティングリース取引は注記が不要となります。
- リース契約1件当たりのリース料総額が300万円以下で、事業内容に照らして重要性が乏しいリース取引
- リース期間が1年以内のリース取引
- 少額資産(個々のリース物件のリース料総額が購入時一括費用処理する基準以下)のリース取引
- 契約上数ヶ月程度の事前予告をもって解約でき、予告した解約日以降のリース料の支払を要しないリース契約について、事前解約予告期間(解約不能期間)に係る部分のリース料
リース料を賃貸借処理した場合の消費税
なお、リース料を費用処理(賃貸借処理)する場合、支払リース料に係る消費税は、その全額をリース開始時に仕入控除することが原則となりますが、リース料を支払うべき日の属する課税期間において仕入控除する方法(分割控除)も認められています。
まとめ
今回の記事の要点をまとめます。
- 中小企業の定義: 上場会社やその子会社・関連会社、会計監査人を設置する会社を除く法人。
- 会計処理の選択肢: 中小企業の所有権移転外ファイナンス・リース取引は、賃貸借処理が可能。
- 未経過リース料の注記: 賃貸処理する場合は原則注記が必要であるが、重要性のないリース取引は注記不要。
- 消費税の処理: リース料の消費税は、全額をリース開始時に仕入控除するか、分割控除が可能。
となります。
この記事が経理・税務に関わる皆さんのお役に立てば幸いです。
それでは、また!
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