【不動産売却で健康保険料は上がる?】譲渡所得と健康保険料の関係を解説

所得税

不動産売却したんですけど、健康保険料って上がるんですか?

不動産の売却を検討していると、所得・税金について様々な疑問が出てくると思います。

そして忘れてはいけないのが社会保険料。知らずに多額の保険料が引かれていたら、びっくりしてしまいますよね。

結論から言うと、不動産の売却で翌年の健康保険料が上がる可能性があるのは「国民健康保険加入者と後期高齢者医療制度加入者」です。ただし、特例の利用により譲渡所得が発生しない場合など、状況によって異なります。

今回は不動産売却と健康保険料の関係を解説するとともに、金額を抑える方法もご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

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不動産売却で健康保険料が上がるケースとは?

健康保険にはいくつか種類があり、不動産売却の際に金額に影響があるかどうかは、実は健康保険の種類によって異なります

なので、まずは健康保険の種類についてみていきましょう。

健康保険の主な種類は4つ

そもそも、日本では国民皆保険制度という制度が定められていて、無職の人も含めてすべての国民が加入しなければいけません。

そして、健康保険に加入すると、病気や怪我をしたときに医療費の一部が負担軽減されることになっています。

健康保険には大きく分けて4つの種類があります。

①健康保険

会社員やその扶養家族が加入できる公的医療保険です。中小企業の従業員とその扶養家族が加入する「協会けんぽ」や大企業の従業員とその扶養家族が加入する「組合健保」があります。健康保険料は、月給を基準とした「標準報酬月額」により決定します。

②共済保険

国家公務員や地方公務員が加入できる公的医療保険です。「国家公務員共済組合」「地方公務員共済組合」「私立学校教職員共済」などがあります。健康保険料は、健康保険と同様に月給を基準とした「標準報酬月額」により決定します。

③国民健康保険

自営業や年金生活者、非正規雇用者、その家族が加入する公的医療保険です。都道府県と市町村が連携で運営しており、健康保険料は世帯の所得や加入者の人数などによって決定します。

④後期高齢者医療制度

75歳以上もしくは65歳以上で障害を持つ高齢者が加入する公的医療保険です。保険料は加入者の所得によって決定します。

①健康保険と②共済保険加入者は保険料は上がらない

健康保険と共済保険は、毎月の給料をもとに計算された健康保険料を国に収める仕組みです。

これを「標準報酬月額」といいます。

不動産売却を行なったとしても、得た利益(譲渡所得)が給与として計算されないため、加入者本人の保険料が上がることはありません。

健康保険は会社員の方、共済保険は公務員の方が加入するので、ざっくりいうと、会社員と公務員の人は不動産売却しても社会保険料には影響がないといえますね!

ただし、①健康保険と②共済保険加入者も扶養には注意!

ただし、扶養されている人(本来年収130万円以下)が所有する不動産を売却した場合は注意が必要です。

一時的に年収が130万円を超えることになれば、一時的に高額所得者とされて扶養から外れてしまう可能性があります。

被扶養者の場合、一時的な収入は例外とみなされることもありますが、要件は保険組合によって異なります。

健康保険・共済保険でも、被扶養者が持っている不動産を売却する場合は一度保険組合に確認するようにしましょう。

③国民健康保険と④後期高齢者医療保険は保険料が上がる可能性がある!

健康保険料のうち、不動産売却をした際に保険料が上る可能性があるのは国民健康保険と後期高齢者医療保険に加入している人です。

この2つは月の給料から計算されるのではなく、「基準総所得金額」という世帯ごとの総所得をベースとして計算された健康保険料を、国に収めることになっています。

不動産を売却することで出た利益(譲渡所得)は課税対象になるため、所得として計算されることになります。

そして、その金額によって翌年の保険料額が値上げされるという仕組みです。

保険料が上がるのは「譲渡所得が発生した場合」のみ

不動産売却によって保険料が上がる可能性がある健康保険に加入していていたとしても、保険料が上がるのは「譲渡所得が発生した場合」のみです。

譲渡所得の計算方法は、以下のとおりです。

譲渡所得=収入金額(物件を売却した総額)− 取得費(物件購入時の金額+仲介手数料)− 譲渡費用(物件売却にかかった費用)

不動産売却で健康保険料の金額はどのくらいあがる?

では、不動産売却によって健康保険料が上がってしまう場合、どのくらいの金額になるのでしょうか。

国民保険料の内訳は「基礎課税分(医療分)」「後期高齢者支援金分(後期分)」「介護納付金分(介護分)」の3つです。

このうち不動産売却により影響があるのは「基礎課税分(医療分)」で、下の4つ(自治体によっては3つ)の要素で構成されています。

  • 所得割:総所得から計算される
  • 均等割:世帯の保険加入人数による定額
  • 平等割:自治体によって決められた定額※自治体によってはなし
  • 資産割:固定資産より計算される※自治体によってはなし

この中で不動産売却の影響を受けるのは「所得割」の部分です。

所得割の計算方法は、下記のとおりです。

(総所得額ー43万円(基礎控除額))×保険料率

※ただし合計所得金額2,400万円以下の場合
※また、保険料率は各自治体によって異なりますので、自分の自治体の保険料率を調べて計算してみましょう。

実際にシミュレーションしてみる

シミュレーションとして、令和6年度沖縄県沖縄市の国民健康保険料率を参考に計算してみましょう。

国民健康保険の計算例

【前提条件】
国民健康保険加入者
①夫(45歳) 所得額500万円
②配偶者(45歳) 所得額0円
③子(10歳) 所得額0円

不動産の売却がなかった場合

・医療分 380,122円
所得割 (世帯所得500万円-基礎控除額43万円)×保険料率6.62%=302,534円
均等割 加入者数3人×19,658円=58,974円
平等割 1世帯につき18,614円

・後期支援分 163,328円
所得割 (世帯所得500万円-基礎控除額43万円)×保険料率2.85%=130,245円
均等割 加入者数3人×8,382円=25,146円
平等割 1世帯につき7,937円

・介護分 141,899円
所得割 (世帯所得500万円-基礎控除額43万円)×保険料率2.39%=109,223円
均等割 加入者数3人×8,927円=26,781円
平等割 1世帯につき5,895円

合計685,349円

 

不動産の売却があった場合

不動産の売却があり、売却金額から譲渡費用と取得費を差し引いた金額である譲渡所得が200万円発生した場合

・医療分 512,522円
所得割 (世帯所得500万円+譲渡所得200万円-基礎控除額43万円)×保険料率6.62%=434,934円
均等割 加入者数3人×19,658円=58,974円
平等割 1世帯につき18,614円

・後期支援分 220,328円
所得割 (世帯所得500万円+譲渡所得200万円-基礎控除額43万円)×保険料率2.85%=187,245円
均等割 加入者数3人×8,382円=25,146円
平等割 1世帯につき7,937円

・介護分 189,699円
所得割 (世帯所得500万円+譲渡所得200万円-基礎控除額43万円)×保険料率2.39%=157,023円
均等割 加入者数3人×8,927円=26,781円
平等割 1世帯につき5,895円

合計922,549円

譲渡所得が200万円発生すると、不動産売却がない場合と比べて237,200円増加する結果になります。

不動産売却で健康保険料が上がる場合、値上がりを抑える方法

不動産売却によって値上がりしてしまう健康保険料は、仕方がないものなのでしょうか。

しかし、実は、不動産売却を行っても健康保険料の値上がりを抑えられる場合があるので、詳しく解説します。

マイホーム売却の場合は3,000万円の控除がある

マイホームを売却した場合には、3,000万円分の「特別控除」が受けられます。

譲渡所得から3,000万円を引いた課税譲渡所得が0円以下となれば、保険料の値上がりはほとんどありません。

たとえば5,000万円で購入したマンションを6,000万円で販売した場合、譲渡所得は1,000万円です。

この場合、

譲渡所得1000万円ー特別控除3000万円=-2000万円

と、課税譲渡所得はマイナスとなるため、翌年の健康保険料が高くなることはありません。

しかし、この特別控除には以下の条件が要件があるため注意が必要です。

  • 3年に1度しか使えない
  • 売却する住居が、自分が住んでいる居住用住居である
  • 売却する相手が夫や妻など配偶者や親、子、同族会社等でない
  • 売った年、その前年及び前々年にマイホームの買い換えやマイホームの交換の特例の適用を受けていない
  • 確定申告をすること

不動産売却の経費をしっかり計上する

譲渡所得は「収入金額 − 取得費 − 譲渡費用」で計算されることは説明しましたが、この「譲渡費用」をしっかりと計上しておきましょう。

そうすれば譲渡所得を抑えることができ、結果的に値上げする額を抑えることができます。

譲渡費用に含まれるのは「不動産会社に支払う仲介手数料」や「売買契約書に貼付する印紙代」など。

「引越し費用」もこれに該当するので、領収書や請求書、通帳のコピーなど実際の出費を説明できるものをしっかりと保管しておきましょう。

おわりに

不動産を売却すると、翌年健康保険料が上がるケースもあります。

①健康保険と②共済保険加入者は保険料は上がりませんが、③国民健康保険と④後期高齢者医療保険に加入していて「譲渡所得が発生した場合」には上がります。

扶養されている人が所有する不動産を売却した場合にも注意が必要です。

一時的に年収が130万円を超えることになれば、扶養から外れてしまう可能性があります。

住宅を売ることを検討している方は自分が保険料値上げのケースに当てはまるか、しっかりと確認しましょう。

また、保険料が上がってしまう場合も特別控除の制度を知っていたり、事前に準備したりすることで値上げの幅を抑えられる可能性も。

しっかりとチェックしておけば、いくらか出費を抑えることができますので、是非確認してみてください。

それでは、また!

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