年末調整が終わって1月に入ると、その後の処理として
- 「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」(以下「法定調書合計表」といいます)
- 「法定調書」
- 「給与支払報告書(個人別明細書、総括表)」(以下「給与支払報告書」といいます)
を1月31日までに提出しなければなりません。
この中で、「1.法定調書合計表」は原則どの会社も提出が必須です。
一方で「2.法定調書」については、6種類の調書があり、それぞれを提出が必要かどうか判定しなくてはなりません。
今回は、法定調書の提出義務について書いていきます。
法定調書は6種類
法定調書には6種類あります。
- 給与所得の源泉徴収票
- 退職所得の源泉徴収票
- 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
- 不動産の使用料等の支払調書
- 不動産等の譲受けの対価の支払調書
- 不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書
それぞれの内容と提出の要否をみていきましょう。
1.給与所得の源泉徴収票
給与所得の源泉徴収票のうち、税務署に提出が必要なものは、支払金額が一定金額を超える場合に限られ、年末調整したものか否かによっても違ってきます。
(※従業員に対する給与所得の源泉徴収票自体は、給与等を支払ったすべての人について作成し、交付しなければなりません。)
それぞれみていきましょう。
給与の支払金額が一定以上の場合
税務署に提出しなければならない給与所得の源泉徴収票は、年末調整したものについては、次の人が提出対象となっています。
- 法人の役員については、その年中の給与等の支払金額が150万円を超える人。役員には、相談役、顧問そのほかこれらに類する場合のほか、現に役員をしていなくても、その年中に役員であった場合も含みます。
- 弁護士、司法書士、土地家屋調査士、公認会計士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士、測量士、建築士、不動産鑑定士、技術士等については、その年中の給与等の支払金額が250万円を超える人。ただし、給与等として支払うのではなく、報酬として支払う場合には、「報酬、料金、契約金および賞金の支払調書」を提出することとなります。
- 上記の2つ以外の人(従業員等)については、その年中の給与等の支払金額が500万円を超える人
何らかの理由で年末調整をしなかった場合
一方、年末調整をしなかったものについては、給与等の支払金額の線引きが異なります。
- 「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出したものの、その年中に退職した場合や、災害により被害を受けたため給与所得に対する所得税および復興特別所得税の源泉徴収の猶予を受けた場合については、その年中の給与等の支払金額が250万円を超える人。ただし、法人の役員については、50万円を超える人が対象となります。
- 「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出した場合で、その年中の主たる給与等の金額が2,000万円を超えるため、年末調整をしなかった人
- 「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出しなかった場合については、その年中の給与等の支払金額が50万円を超える人
3には、給与所得の源泉徴収税額表の月額表、または日額表の乙欄、または丙欄の適用者が該当します。
なお、その年の途中で入社した従業員で「給与所得者の扶養控除等申告書」の提出があったものの、前職の源泉徴収票がなく、給与等の金額がわからないような場合も年末調整はできません。したがって、転職後の給与等の支払金額が250万円を超える場合には、「給与所得の源泉徴収票」を税務署に提出する必要があります。
2.退職所得の源泉徴収票
「退職所得の源泉徴収票」と「特別徴収票」は、その年に支払の確定した退職手当等についてすべての受給者分を作成、交付することになっています。
このうち受給者が法人の役員である者は税務署に「退職所得の源泉徴収票」を提出する必要があります。また、同時に市町村にも「特別徴収票」を提出する必要があります。
3.報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
弁護士、税理士、社会保険労務士等に報酬を支払う場合、及び原稿料や講演料を支払う場合などに必要となります。
支払側は、これらの支払いをするときには、所得税を源泉徴収することになり、1年間にどれだけ支払い、いくら源泉徴収したのかを記載し、税務署に提出します。
支払調書には、区分、細目と、支払金額や源泉徴収税額、支払いを受ける者や支払者の住所、氏名を記載します。ただし、弁護士・税理士等への報酬、作家への原稿料、画家への画料、講演料等については、同一の者への年間の支払金額が5万円以下の場合には提出不要となります。なお、上記以外にも支払調書の提出が必要となる報酬が規定されていますので、注意が必要です。
4.不動産の使用料等の支払調書
不動産の使用料等の支払調書の提出義務があるのは法人または不動産業者である個人となります。
不動産等の使用料を支払った場合に必要となり、事務所の家賃、また権利金や更新料、礼金等も含まれます。また、一時的な地代なども含まれます。ただし、法人に対して支払う家賃や賃貸料については権利料、更新料等のみを提出すればよく、家賃や賃貸料のみ支払っている場合は支払調書の提出義務はありません。
また、敷金や保証金については基本的には返還されるものであるため提出義務はありませんが、敷金や保証金が返還されないことが確定した場合には支払調書を提出する必要があります。
支払調書には、不動産の区分(家屋、事務所等)、その所在地、細目(家賃等)、計算方法、支払金額と、あっせん、仲介をした者がいればその詳細、使用料の支払者・支払いを受ける者の住所及び氏名を記載することになります。
ただし、不動産事業者である個人で、主に建物の賃貸借の仲介をしている場合や、代理を目的とした事業を行っている場合には提出義務はありません。また、同一の者に対する年間の支払いが15万円以下のものについては提出不要です。
不動産事業を営む法人に対して支払う料金が、権利金、更新料等のときのみ支払調書の提出義務が発生します。賃借料のみのときは支払調書の提出は不要です。
5.不動産の譲り受けの対価の支払調書
不動産等を譲り受け、同一の者に対して、その年中の支払金額の合計額が100万円を超えた場合に提出が必要となります。
不動産等の譲り受けの内容には、不動産の売買や交換をした場合、あるいは競売、現物出資、公売などによって取引をした場合も含まれます。
支払調書には、物件の種類・所在地・細目・数量・取得年月日・支払金額、あっせんした者がいればその詳細、支払者及び支払いを受ける者の住所及び氏名を記載します。
不動産等の譲り受けの代金の他に、補償金が支払われる場合は、摘要欄に補償金の種類と金額を記載します。
不動産を譲り受けた場合でも、同一の者に対して、その年中の支払金額の合計額が100万円以下の場合には提出が不要です。
6.不動産等の売買または貸付けのあっせん手数料の支払調書
不動産等の売買や貸付に係るあっせん手数料を、同一の者に対しその年中で15万円を超える額を支払った場合に提出するものです。
ただし、「不動産の使用料等の支払調書」「不動産等の譲り受けの対価の支払調書」の「あっせんをした者」の欄に必要な記入がされている場合は提出の省略が可能です。また、不動産業を営む個人事業者で、主として建物の賃貸借の代理や仲介を目的とする事業を営んでいる者には、提出義務はありません。
支払調書には、区分、支払確定年月日・支払金額と、あっせんに係る不動産等の物件の種類・物件の所在地・数量・取引金額、支払者及び支払いを受ける者の住所及び氏名を記載します。
おわりに
以上、法定調書は6種類&それぞれの提出義務の判定方法についての解説でした。
金額によっては意外と出さなくても大丈夫なものもあったはずです。
また、法定調書合計表とも連動するところなので、しっかり確認して効率的に対応していただければと思います。
それでは、また!
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