自宅を事務所として活用して経費化することは、多くの節税メリットがあります。
しかし、将来の売却時には注意が必要です。
なぜなら、居住用財産の特別控除を受けられるかどうかで譲渡した年度の所得税に大きな影響があるからです。
事務所化した自宅の売却時に、居住用財産の特別控除を受けるには事前の準備と計画が重要なんです。
今回は『自宅を事務所として経費化した上で将来自宅を売却する場合の注意点』についてみていきましょう。
自宅を事務所として使うことのメリット
自宅を事務所として使用することには、いくつかのメリットがあります。
代表的な例を3つほどあげますと、
- 個人事業主の場合、自宅にかかる固定資産税のうち、事業に使用している部分を租税公課として事業の必要経費に算入することができます。
- 法人の場合、代表者個人と法人で賃貸借契約を結び、法人が個人に支払った家賃を損金に算入することが可能です。
- 電気代、水道代、ガス代などの事業上使用している部分も、実費分を経費として計上することができます。
といったものが挙げられます。
自宅を事務所化することのメリットや方法をもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
このように、自宅を事務所として使用することは、事業上の節税対策となります。
将来、自宅を売却する場合の注意点
居住用財産を売却した場合、その売却益に対して3,000万円の特別控除を受けることができます。
具体的には、居住用財産の譲渡所得の特別控除(租税特別措置法35①)や、居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例(租税特別措置法31の3)などが適用されるのですが…
これらの特例を受けるためには一定の要件があるのです。
居住用部分のみが特別控除や軽課の適用対象
居住用財産は、居住の用に供している建物およびその敷地を指します。
したがって、居住の用に供していない部分については特例を受けることはできません。
例えば、家屋の総床面積のうち1/4が事業用で使われている場合、その部分には特別控除の適用はありません。
計算例)家屋の総床面積のうち1/4が事業用で使われている建物とその敷地を譲渡し、500万円の利益が出た場合
譲渡所得=利益500-(特別控除500-500×1/4)=125万円
この125万円に税率をかけて所得税、住民税が計算されます。
家屋の居住用部分が全体の概ね90%以上の場合に適用可能
ただし、事業用で使っている部分が家屋全体の概ね10%以下であれば、その家屋と土地を譲渡した場合、全体が居住用とみなされ、居住用財産の特別控除3,000万円を適用することができます。
注意点:家賃の支払い有無は関係ない
ちなみにこの時の判断基準は「事業で使っている」→「居住用に使っていない」→「特例の適用なし」という流れになります。
したがって、家賃が発生していない場合や申告上経費に入れていない場合でも、実際に事業として使っている部分がある場合には特例は適用されません。
売却直前に用途変更をした場合
建物に関しては、基本的には譲渡直前の用途で規定の適用を考えます。
しかし例えば、20%が事業用に使われていた店舗兼住宅を譲渡直前に店舗を売却した場合、その20%部分は”居住用”ではなく、”事務所の未使用”と判定され、居住用の特例は適用されません。
居住用と判断されるためのタイミング
では、売却前のどのタイミングで用途変更をすると、未使用ではなく居住用と判断してもらえるのか?
これに関し、実は明確な規定はありません。
ただ、国税庁によると、売却前の最低でも1年前から用途変更を行う必要があります。
3000万円の特別控除を全体に使いたい場合は、1年前から準備を進めることが重要です。
まとめ
いかがだったでしょうか?
自宅を事務所として使用することには多くのメリットがあります。
ただし、持ち家の節税を最大活用するには、売却する前の対応に注意が必要なことがおわかりいただけたと思います。
居住用財産の特別控除までしっかり受けるために、前もって事前の準備と計画を立てましょう。
この記事が、皆様の節税対策のお役に立てば幸いです。
それでは、また!
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