登記の申請をする際、「株主リスト」の添付が必要となるケースがあります。
しかし、状況によって記載すべき項目が異なったり、そもそも添付書類として提出が不要だったりと、ルールは少し複雑です。もちろん、記載内容に不備があれば、登記申請が滞り、会社の運営に悪影響を及ぼすおそれもあります。
また、似たようなもので「株主名簿」もありますが、違いはあるのでしょうか?
今回は、株主リストと株主名簿の違い、株主リストの作成方法や実務上の注意点などを解説します。
株主リストとは
「株主リスト」とは、会社の株主の情報が記載された書面のことをいいます。
株主リストと株主名簿の違い
よく似た用語に「株主名簿」がありますが、株主名簿と異なるのは、株主リストは議決権数の記載が必須である点です。場合によっては、議決権割合の記載も必要になります。
株主名簿についてはコチラを参照ください。
株主リストの添付が求められる理由
もともと登記すべき事項に株主総会の決議が必要な場合、登記申請の際に株主総会議事録を添付する必要がありました。これに加えて、平成28年10月1日より、株主総会議事録に加えて株主リストの添付が求められるようになりました。
株主リストの添付を制度化した理由について、法務省の説明を要約すると、以下のようになります。
株主総会議事録を偽造し、虚偽の登記申請を行った犯罪や違反行為が横行。それを抑止するためには、登記の真実性の担保と会社の透明性の確保が必要であるため。
出典:法務省令の説明を要約
株主リストの添付が必要なケース
登記申請の際に株主リストの添付が必要なケースは、次の2つです。
- 株主総会の決議(種類株主総会の決議)を要する登記手続きの場合
- 株主全員の同意(種類株主全員の同意)を要する登記手続きの場合
それぞれ見ていきましょう。
株主総会の決議を要する登記手続
役員の選任・解任や組織再編などで、株主総会の決議が必要となる場合、登記申請時に株主リストの添付が必要となります。
株主リストに記載する株主は、次のうち人数の少ないほうです。
- 議決権数上位10名の株主
- 議決権割合が3分の2に達するまでの株主
株主の情報は、次の5事項を記載します。
- 株主の氏名又は名称
- 住所
- 株式数(種類株式発行会社は,種類株式の種類及び数)
- 議決権数
- 議決権数割合
なお、種類株主総会の決議を要する場合は、その種類株式についての株主リストが必要です。
株主全員の同意を要する登記手続
役員等の責任の全部免除といった株主全員の同意が必要となる登記手続きを行う際も、株主リストの添付が必要です。
この場合、株主リストには株主全員を記載します。また、株主情報は次の4事項の記載が必要です。
- 株主の氏名又は名称
- 住所
- 株式数(種類株式発行会社は,種類株式の種類及び数)
- 議決権数
種類株主全員の同意を要する場合は、種類株主全員についての株主リストが必要です。
株主リストのひな形&記載例
株主リストには規定書式はなく、必要事項が記載されていれば効力を発します。
とはいえ、ひな形(テンプレート)が欲しい方のためにご用意しました。
記載例
合わせて法務省ホームページの記載例が下記になります。
株主リストを作成する時の注意点
株主リストを作成する際に注意すべきポイントがいくつかあります。
代表者が作成する
株主リストは原則、法務局に印鑑を提出している代表者が作成します。なお、取締役の改選で代表者が変更する場合は、新たな代表者(登記申請時の代表者)が作成しなければなりません。
株主総会の議案ごとに作成する
株主総会で複数の議案(登記事項)を決議した場合、議案ごとに株主リストを作成する必要があります。
ただし、各議案で株主リストの記載情報が同じ場合、その旨を明記すれば、株主リストの作成を1通で済ませることができます。
まとめ
株主リストは、登記申請に必須の書類であり、登記の真実性や会社の透明性を確保する大切な書類です。
求められた際には、登記申請がスムーズに行えるように決められたルールに則り、抜け漏れのないように作成しましょう。
その際に、この記事が参考になればうれしい限りです。
以上、『株主名簿と株主リストの違い|登記で必要な「株主リスト」の書き方』でした。
それでは、また!
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