還付金とは、税金を納めすぎた場合に返還されるお金のことです。
事業をしていると、税金の納付は必ず発生しますし、場合によっては、税金を納めすぎて還付される場合もあります。
還付金は、ケースごとに用いる勘定科目が異なることもあるため注意が必要です。
この記事では、還付金に用いる勘定科目や具体的な仕訳例を解説します。
還付金は返還されるお金
還付金とは、税金を納めすぎた場合に返還されるお金のことです。
事業上の還付金としては、主に法人税・消費税・所得税などの還付金が考えられます。
具体的には次のような場合に、還付金が発生します。
- 中間納付や見込納付の額が確定納付額より多かった場合
- 預かった消費税より支払った消費税が多かった場合
- 二重納付してしまった場合 など
また、実際に払いすぎた金額とは別に、利子の性質をもつ還付加算金が発生する場合もあります。
還付金に用いる勘定科目
還付金に用いる勘定科目は次の通りです。
それぞれの解説をみていきましょう。
①未収入金(未収法人税等・未収消費税等など)
法人税や消費税の中間納付額や見込納付額が確定納付額より多かった場合や、消費税の確定時に仮受消費税より仮払消費税が多かった場合などは「未収入金」の勘定科目を用いて処理します。
「未収入金」は、本業の営業活動以外で回収すべき残高のある債権に用いる勘定科目です。
わかりやすく「未収法人税等」や「未収消費税等」などの科目を設定する場合もあるでしょう。
②雑収入
未収入金として計上していない還付金を受け取る場合や、還付加算金を受け取った際は「雑収入」の勘定科目を用います。
「雑収入」は、収入の中で他のどの勘定科目にも分けることができない場合や、独立科目として管理するほど金額的に重要でない収入を計上する勘定科目です。
③事業主借
個人事業主が、所得税の還付金を事業用として使用している口座で受け取る場合、「事業主借」の勘定科目を用います。
「事業主借」は、個人事業主が事業用でない資金を用いて事業用の支出を行った場合や、事業用口座に事業と関連しない入金があった場合に用いる勘定科目です。(逆に法人では絶対に発生しない勘定科目です)
所得税は、個人の所得に対して課税される税金です。そのため事業によって発生したとはいえず、事業に関連しない入金であると考えます。
還付金は事業でなく個人に返還されるお金であるため、事業用口座ではなくプライベート用口座で受け取った場合は、仕訳の必要はありません。
ちなみに個人の所得税を支払った場合の仕訳はこちらの記事で解説しています。

④租税公課、仮払金など
もし税金を二重に納付してしまった場合など、納付と還付が同じ会計期間内に行われる場合は、元々使った勘定科目を使って逆の仕訳を行うことで、消し込む処理が可能です。
例えば、
- 「租税公課」を使って計上していた場合
→納付時に「租税公課」を使ったなら、還付金も貸方に「租税公課」を使って処理します。 - 過払いが分かっていて「仮払金」で処理していた場合
→過払いがすでに分かっている場合、納付時に「仮払金」を使ったなら、還付金も貸方に「仮払金」を使って処理します。
なお、もし税金の還付が別の会計期間に行われた場合には、すでに「租税公課」として経費に計上しているため、還付金は「雑収入」として処理する必要があります。
ケース別:還付金の仕訳例
還付金の具体的な仕訳例をケース別に紹介します。
法人税の還付を受ける場合
法人が、法人税の還付を受ける際の仕訳例を紹介します。
例:中間申告で100万円を納付し「仮払法人税等」で処理していたが、確定した法人税額は80万円であり、20万円還付されることが判明した
①決算時
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
法人税等 未収還付法人税等 |
800,000円 200,000円 |
仮払法人税等 | 1,000,000円 |
②還付金の入金時
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
普通預金 | 200,000円 | 未収還付法人税等 | 200,000円 |
消費税の還付を受ける場合
消費税の還付を受ける際の仕訳例を紹介します。
消費税は、会計処理に税抜経理方式・税込経理方式のいずれを採用しているかで仕訳内容が異なるため注意が必要です。
例:期末時点で仮払消費税30万円・仮受消費税20万円で10万円の還付金が判明した
1.税抜経理方式
①決算時
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
仮受消費税 未収消費税等 |
200,000円 100,000円 |
仮払消費税 | 300,000円 |
②還付金の受取時
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
普通預金 | 100,000円 | 未収消費税等 | 100,000円 |
2.税込経理方式
①決算時
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
未収消費税等 | 100,000円 | 雑収入 | 100,000円 |
②還付金の入金時
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
預金 | 100,000円 | 未収消費税等 | 100,000円 |
個人事業主が所得税の還付を受ける場合
個人事業主が、所得税の還付金を事業用口座で受け取る場合の仕訳例を紹介します。
なお、所得税は、事業主個人に対して課税される税金であり、還付金も事業活動には関連しません。したがって、事業用口座ではなくプライベート用の口座に還付金が入金された場合は、仕訳の必要はありません。
例:所得税額が確定し、納付済の金額から10万円の還付があると判明した場合
①還付金の判明時
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
未収入金 | 100,000円 | 事業主借 | 100,000円 |
②還付金の入金時
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
預金 | 100,000円 | 未収入金 | 100,000円 |
ちなみに還付金以外に100円の還付加算金があり、還付加算金分を未収入金として処理していなかった場合は次のとおりの仕訳になります。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
預金 | 100,100円 | 未収入金 事業主借 |
100,000円 100円 |
計上時の反対仕訳で消し込む場合
納付時に用いた勘定科目と同一の科目を使用し、反対仕訳で消し込む場合の仕訳例を紹介します。
例:自動車税40,000円を現金で支払ったが、後日過払いであると判明し、還付金10,000円を振込で受け取った
1.支払時に租税公課で計上した場合
①納付時
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
租税公課 | 40,000円 | 現金 | 40,000円 |
②還付金入金時
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
普通預金 | 10,000円 | 租税公課 | 10,000円 |
2.納付後すぐに過払いであると判明し仮払金で計上した場合
①納付時
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
租税公課 仮払金 |
30,000円 10,000円 |
現金 | 40,000円 |
②還付金入金時
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
普通預金 | 10,000円 | 仮払金 | 10,000円 |
還付金を会計処理する際の注意点
改めて、還付金が発生した場合の会計処理の注意点について確認していきましょう。
ケースごとに適切な勘定科目と会計処理方法を選択する
還付金を受け取った際の会計処理方法は、一律ではありません。
税金納付時の勘定科目や、還付金の判明時に未収入金として計上されているかどうかなど、ケースによって処理が変わります。
消費税の場合は、税抜・税込処理いずれを採用しているかにもよっても異なります。
還付金の発生のつど、ケースに応じて適切な勘定科目と会計処理方法の選択が必要です。
益金算入の取り扱いに注意する
税金の還付金を会計処理する際には、益金算入の取り扱いに注意が必要です。
法人税や所得税の税金の還付金は、原則として益金不算入です。
ただし、利子の性質をもつ還付加算金や、事業税や自動車税などの支払った際に損金算入される税金が還付される場合は益金算入されます。
(租税の損金算入できる・できないの判断はこちらの国税庁HPのタックスアンサーが参考になります)
還付金と還付加算金は一般的に合算して振り込まれます。仮に両方を雑収入で処理する場合でも、益金算入・不算入の取り扱いが異なるため、それぞれの金額に分けて会計処理が必要な点には注意が必要です。
まとめ
いかがだったでしょうか?
還付金に用いる勘定科目は、ケースごとに異なり、「未収入金」「雑収入」「事業主借」を用います。
反対仕訳で消し込む場合は、支払時に使用した科目を用いるため「租税公課」「仮払金」などで処理するケースもあります。
還付金の会計処理をする際は、事例別に適切な勘定科目と会計処理方法を選択し、益金算入の取り扱いに注意しましょう。
還付金の会計処理をする際にこの記事がお役に立てば幸いです。
今後も税務に役立つ記事を発信していきますので、またお越しいただければ嬉しいです。
それでは、また!
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