確定申告をしてみたら、思っていたよりも税金が出てしまい、焦ってしまったことはあるあるだと思います。
確定申告の時点で節税しようと思っても、その時点でできる節税というのはほとんどありません。
節税対策は、基本的には年内中に行う必要があります。
ですので、11月頃になりましたら、事業の利益がどのくらい出ているのか、所得税などの税金がどれだけ出そうかを計算するのがおすすめです。
そうすれば、その見込みの利益や税金の額に応じて、11~12月中に節税対策を講じることができます。
ここでは、個人事業主が年末ギリギリでも行うことができる節税対策についてご紹介いたします。
事業収支から節税を考える
税金は事業収入から必要経費を差し引いた差額である所得に対してかけられます。
なので、必要経費(事業支出)を計上して課税される所得が小さくすることができれば節税につながるわけです。
では年末ギリギリでもたてられる必要経費をみていきましょう。
30万円未満の備品を購入する(少額減価償却資産の購入)
事業収支に対しての節税として、よく紹介されるのは「少額減価償却資産の購入」です。
1組10万円以上の固定資産(備品など)を購入した場合、基本的には減価償却費によりその購入費用を経費に落とさなければいけませんので、購入した年に購入金額の全額が経費に落ちるわけではないというのが原則的な考え方になります。
しかし、青色申告者の場合は、1組30万円未満の固定資産であれば減価償却費をする必要がなく、購入した年に購入金額の全額を即時償却により経費に落とすことができるという特例があります。
たとえば、20万円のパソコンを購入した場合、青色申告をしているのであれば、20万円全額をその年の経費に落とすことができます。
ですので、備品など近々購入しようと思っていたものがあれば、年内中に購入してしまうというのも節税対策の一つの手です。
ただ、無駄なものや不要なものを購入してしまっては本末転倒ですから、近い将来購入しようと思っていたものを少し前倒しで購入するというくらいにしておいた方がよいでしょう。
なお、この30万円未満の固定資産の即時償却の特例は、年間300万円が限度になりますのでご注意ください。
たとえば、28万円の備品を11個購入した場合、11個目は限度を超えてしまいますから、11個目は通常どおり減価償却により経費に落としていく必要があります。
(28万円×10個=280万円≦300万円、28万円×11個=308万円>300万円)
倒産防止共済に加入する
倒産防止共済は、個人事業を開業して1年目の場合は加入することができませんので、倒産防止共済による節税策は開業2年目以降の個人事業主が対象になります。
倒産防止共済は小規模企業共済と同じような制度で、月々の掛金が経費になり、解約したときに今まで掛けてきた分が戻ってきます。
ただし、小規模企業共済の掛金は所得控除(小規模企業共済等掛金控除)として取り扱われる一方、倒産防止共済の掛金は事業所得の必要経費になります。
また、解約返戻金(共済金)の取扱いとしては、小規模企業共済が退職所得として取り扱われるのに対し、倒産防止共済は事業収入(事業所得)として取り扱われます。
ですので、倒産防止共済については、掛金の支払いにより必要経費に落として節税をしても、解約したときに事業所得としてまた課税されてしまいますから、解約するタイミングは業績が落ち込んで所得が低くなった年がよいでしょう。
倒産防止共済の掛金は、5,000円~20万円(5,000円単位)の範囲で自由に設定することができます(設定後の増額も自由ですが、減額は事業規模が縮小した場合や経営状況が著しく悪化した場合などでないとできないことになっています)。
小規模企業共済と同様、掛金を年払いすることも可能ですので、年末ギリギリであっても最大240万円(=20万円×12か月)の経費を落とすことができます。
(小規模企業共済と同様、加入手続きの期間を考慮して11月下旬くらいには加入の手続きを進めておきましょう。)
また、掛金は、掛金総額が800万円になるまで積み立てることができます。
なお、共済契約はいつでも解約することができますが、40か月以上掛金を納付しないと今まで納付した掛金は全額戻ってきません。
具体的には、解約返戻率は下記のとおりになります。
掛金納付月数 | 任意解約の場合の解約返戻率 |
---|---|
1か月~11か月 | 0% |
12か月~23か月 | 80% |
24か月~29か月 | 85% |
30か月~35か月 | 90% |
36か月~39か月 | 95% |
40か月~ | 100% |
また、倒産防止共済に加入している個人事業主が法人成りした場合には、共済金を受け取らずに法人で加入を継続することができます(その場合、今までの納付月数は継続されることになります)。
ですので、将来法人成りを検討している個人事業主は、無理に解約せずに法人成りした際に法人に引き継がせることを検討してもよいでしょう。
所得控除から節税を考える
事業収支から所得を計算後、さらに所得控除という制度がもうけられています。
この所得控除を利用して年末ギリギリの節税を考える場合には、次の項目があります。
社会保険料控除を利用する、国民年金の前納制度を利用する
国民年金保険、健康保険料などが該当します。その年に納付した金額がそのまま所得控除となり、節税につながります。
手続きの煩雑さや資金繰りから納付が遅れている場合には、年内に納付を完了するようにするとよいでしょう。
また国民年金の前納制度を利用することで、年金の割引を受けながら、最大2年分の社会保険料控除を受けることができます。
所得が多い年は検討してみてください。
寄付金控除を活用する
「寄附金控除」とは、国や地方自治体、日本赤十字社、認定NPO法人などに寄附をした時に受けられる所得控除です。確定申告をすると納税額が軽減されたり納めた税金が還付されたりするので、節税することができます。
ただし、上限があることも忘れてはいけないポイントです。
寄附金控除額= 『支払った特定寄附金の額』と『総所得金額等の合計額の40%』とのいずれか少ない金額 - 2,000円
上記のような計算がされるため、『総所得金額等の合計額の40%』を超える寄付金は所得控除として認められません。
ふるさと納税も寄付金控除の一つなので、毎年限度額が話題になりますよね。
また、最近ではエンジェル税制なんていうのもでてきています。
特にエンジェル税制Aはベンチャー企業に投資しながら、その「投資額-2000円」を所得控除できる制度です。節税しながら将来キャピタルゲインを狙えるかもしれないのが魅力ですね。
タイミングが合えば活用を目指してみてもよいと思います。
小規模企業共済に加入する
小規模企業共済とは、一言でいうと事業主のための退職金制度です。
月々掛金を支払うことにより、個人事業主が廃業したときなどの生活資金をあらかじめ積み立てていくことができます。
月々の掛金は1,000円~7万円(500円単位)の範囲内で自由に設定することができます(自由に変更することも可能です)。
また、この掛金は、小規模企業共済等掛金控除として支払った金額の全額が所得控除の対象になります。
そして、掛金は年払いが認められており、たとえば12月に向こう1年分を支払ったとしても、その支払った年額は、その支払った年において所得控除をとることができます。
つまり、年末ギリギリでも掛金を支払ってしまえば、支払った分だけ所得を抑えることが可能なのです(ただし、小規模企業共済の加入には諸手続きが必要なので、11月下旬くらいには手続きを進めておきましょう)。
月額掛金は最大7万円ですから、最大84万円分(=7万円×12か月)の所得控除をとることができます。
また、個人事業を廃業する際などに受け取る小規模企業共済の共済金は、個人事業主の退職所得になるため所得税が課税されることになりますが、退職所得は所得税の負担がかなり軽い所得区分になりますので、軽い税負担で共済金を受け取ることができます。
ただし、小規模企業共済は業種ごとに加入の要件があり、建設業においては従業員数が20人以下の事業主でないと加入することができません。
また、加入してから20年以内に廃業以外の理由で解約した場合は元本割れになってしまいますので、長期的な計画で小規模企業共済に加入するようにしましょう。
おわりに
いかがだったでしょうか?
以上が年末に行える個人事業主の節税策になります。
いくつかあげさせていただきましたが、やはり前提となる現時点の利益を把握することが、まず大事です。
無駄遣いしてしまったり、対策し過ぎて赤字になってしまったりしては本末転倒ですからね。
ご紹介した中では、特に小規模企業共済は、個人事業主にとっては自分の退職金を確保する上で非常に有効な制度になりますし、そのうえで節税もできますので個人事業主に限らず会社経営者にとってもオススメの制度です。
利益が出そうだからといって無駄なものを買って節税するよりも、投資や貯蓄に回すことによる節税手段の方が将来にとって有効といえるでしょう。
この記事が、皆様の確定申告や節税対策に役立つ情報となれば幸いです。
それでは、また!
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