現在、銀行に預けるよりも金利が高いケースが多い社内預金。
最初の金額設定や申請のみで勝手に貯蓄が増えていくので従業員にとって大変便利な制度です。
今回は社内預金のメリットやデメリット、財形貯蓄との違いについてみていきましょう。
「社内預金」とは?
社内預金とは”企業が従業員の給与の一部を天引きして預かって、貯蓄を行う仕組み”のことを言います。
労働基準法では従業員の足止めを企図する「強制貯金」が禁止されているため、あくまでも従業員が任意で利用が決められる制度です。
なので、福利厚生の一環でありますが、導入している企業としていない企業があります。
また、金利は会社によって異なりますが労働基準法で利率や保全措置等に関する規制が定められています。
企業側としても、その受入預金を設備投資や会社の運転資金に充てられるなどのメリットがあります。
社内預金のメリット
それでは、社内預金のメリットをみていきましょう。
従業員からすると社内預金の下限利率は、現在の定期預金の市中金利と比べると高い水準です。
そのため、単純に利率の面から考えれば、社内預金制度は従業員にとって魅力的な福利厚生といえるでしょう。
また給与から天引きされるため貯金がしやすいというメリットがあります。
会社側にとっては、受入た社内預金を設備投資や会社の運転資金に充てられるなどのメリットがあります。
社内預金のデメリット
会社は厳格な保全措置を講じる必要があること、下限利率以上の利息を支払わなければならないこと、労使協定の締結や預金の受入れ・返還等の事務負担が生じる点がデメリットといえます。
社内預金制度の実施・運用上の留意点
従業員にとっても、企業にとってもメリットのある社内預金制度ですが、厚生労働省が策定している法令を遵守する必要があります。
必ず、運用開始の前に確認しましょう。
項目 | 内容 |
労使協定の締結・届出 | 新たに社内預金制度を実施する場合や制度を変更する場合には、労使協定の締結と労働基準監督署への届出が必要です。 |
社内預金規程の作成と周知 | 社内預金の管理に関する規程を定め、作業場に備え付ける等の方法により労働者に周知しなければなりません。 |
速やかな返還 | 労働者から社内預金の返還を請求された場合には、遅滞なく返還しなければなりません。 |
保全措置 | 毎年3月31日現在の受入れ預金額の全額について、その後1年間を通じて保全措置を講じなければなりません。保全措置としては、「金融機関等による保証契約」「信託会社との信託契約」などがあります。 |
預金管理状況報告 | 毎年3月31日以前1年間の預金管理状況を4月30日までに所轄労働基準監督署長に報告しなければなりません。 |
預金管理状況報告の様式
社内預金と財形貯蓄の比較
社内預金は企業が従業員の任意で給与の一部を天引きし貯蓄を行う仕組みのことです。似たような制度、財形貯蓄があります。(こちらの方が有名な制度かもしれません)
ここでは、社内預金と財形貯蓄との違いをみていきましょう。
財形貯蓄とは?
財形貯蓄とは、会社が従業員の任意でその給与から一部を天引きして提携している銀行などの金融機関に送金し、自動的に貯蓄される仕組みのことです。
社内預金と財形貯蓄の違い
給与の一部を天引きして貯蓄するという点では同じです。
大きな違いは「預金先」です。そのため、必然的に「金利」にも違いが生まれます。
前述したように、社内預金は厚生労働省令で定められているため企業側は0.5%以上の利子を付けなければなりません。
一方で、大手都市銀行で0.13~0.25%なので一般的に金融機関に貯蓄するよりも社内預金の方が金利が高いという違いがあります。
社内預金制度利用の際に人事が知っておきたいポイント
金利の利率が高く引き出しも自由、企業側としては受入預金を運用に使用できるといったメリットが多く挙げられる社内預金ですが、気を付けておきたいポイントがあります。
まず、企業は業績不振で経営が厳しくなったなどやむを得ない理由がある場合、労使協定を改訂して社内預金制度を廃止したり設定していた利率を引き下げたりすることが可能です。
※ただし、利率を下げる場合、厚生労働省令で定められている社内預金の下限利率以下にすることはできません。
また、仮に経営破綻してしまった場合に従業員に大きな損失を与えないために予め何らかの保全措置を講じる義務があると法律で定められています。
従来は社内預金の全預金額が最優先で弁済されるべき「共益債権」とされて更生手続きの制約をうけずに臨時弁済されていましたが、2006年の会社更生法改正によって現在は、共益債権の範囲が「更生手続きが始まる約6ヶ月前の給料の総額」もしくは「預金額の3分の1」どちらか大きい額に制約されて、残りの預金額は優先度の低い債権として扱われることになりました。
従業員に大きな損失を与えないためにも予め予見やシミュレーションが必要です。
おわりに
いかがだったでしょうか?社内預金制度についての理解が深まったでしょうか?
この制度は、従業員と企業の双方にとって多くのメリットを提供する一方で、リスク管理も欠かせません。法的規制を遵守し、制度を構築することが重要です。
従業員の皆さんにおいても、自身の資産を守るためにも適切に活用するためにも制度の詳細を理解することが求められます。
この記事が、皆さんの社内預金制度への理解を深め、制度をより効果的に活用する一助となれば幸いです。
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