みんなお酒好きかーーーい!?
そして、お酒つくってみたくないかい!?
自分で答えてしまいましたが、無類の酒好きである筆者の夢が叶おうとしています。
実は最近、クライアントがクラフトビールの製造を目指すとのことで、今一緒に許可申請をしようとしているんです!関われるだけで嬉しいッッ!
だけどね、酒類製造を始めるにあたって、とるべき免許・営業許可はそれぞれ管轄が違って調べるのが大変なんですよね。
そのくせ、どれか一つでも漏れると、酒造設備が完成したあとに営業できないなんてことも起こりかねない!
だけど、それが一所にまとまってる記事が見当たらなかったので・・・
酒類製造を始めるにあたってやるべきこと
酒類製造を始めるにあたっては、やるべきこと・確認すべきことがいくつかあります。
- 酒類製造免許(税務署)
- 酒類製造業の営業許可(保健所)
- 製造場をつくる場所の用途地域(建築基準法)
一つ一つ見ていきましょう!
(1)酒類製造免許の取り方
酒類を製造しようとする場合には、酒類製造免許が必要です。
これは、酒税法に基づくもので、製造しようとする酒類の品目別・製造場ごとに、税務署に申請します。
また、酒類製造免許をとった製造場で、自分で製造したお酒を販売するときは、酒類販売業免許を取る必要はありません。(他のお酒を販売するときは別途酒類販売免許を取る必要があります)
免許が不要なケース
酒類の製造といっても、家で梅酒やカリン酒をつくって家族で飲むといったケースはあると思います。そのような場合は、酒類製造免許は必要ありません。
酒税法は、消費者が自ら飲むための酒類を製造し、その酒類を販売しない場合の規定をつくっています。
消費者が自分で飲むために酒類(アルコール分20度以上かつ酒税が課税済みのもの)に次の物品以外のものを混和する場合には、例外的に製造行為としない。(酒税法施行規則第13条の3)
それでは次に、酒類製造免許の要件等について、みていきましょう。
酒類製造免許の要件
酒類製造免許を受けるためには、品目ごとに最低製造数量基準以上であることや、拒否要件に該当しないことが求められます。
最低製造数量基準
製造免許を受けた後1年間の製造見込数量が一定の数量に達しているかどうかの「最低製造数量基準」は、酒税法第7条第2項に記されています。
例えば、清酒やビールは60キロリットル、果実酒やリキュールは6キロリットルと定められており、1年間でこれ以上の量を製造する必要があります。
拒否要件
拒否要件(該当してはいけない要件)には、人的要件、場所的要件、経営基礎要件、需給調整要件、技術・設備要件の5つに分類されます。
人的要件(抜粋※)
・酒税法の免許又はアルコール事業法の許可を取り消された日から3年を経過していない場合
・法人の免許取消し等前1年内にその法人の業務執行役員であった者で、当該取消処分の日から3年を経過していない場合
※人的要件は10号まであり長くなるので代表的なものを2つ抜粋しています。
その他の要件は国税庁|【酒類製造免許関係】をご確認ください!
場所的要件
正当な理由なく取締り上不適当と認められる場所に製造場を設置する場合
(酒類の製造場又は販売場、酒場、料理店等と同一の場所等)
経営基礎要件
経営の基礎が薄弱であると認められる場合
(国税・地方税の滞納、銀行取引停止処分、繰越損失の資本金超過、酒類の適正な販売管理体制の構築が明らかでない等)
需給調整要件
酒税の保全上酒類の需給の均衡を維持する必要があるため免許を与えることが適当でないと認められる場合
技術・設備要件
酒類の製造について必要な技術的能力を備えていないと認められる場合又は製造場の設置が不十分と認められる場合
※製造免許の拒否要件の詳細は国税庁のこちらのサイトにあります。
申請方法など
製造しようとする酒類の品目別・製造場ごとに、その製造場の所在地を管轄する税務署に申請します。
酒類製造免許の登録免許税は、15万円(1品目あたり)です。
申請書を税務署に提出してから審査が終了するまでは、2~3か月かかります。
酒類製造免許の申請書は国税庁のこちらのサイトにあります。
(2)酒類製造業の許可について
酒類製造免許をとったら、製造開始!できるわけはありません…
製造免許の他に、食品衛生法に基づく営業許可の必要な34業種の中の「酒類製造業許可」になります。
ちなみに、この許可がなく酒類製造してしまいますと、営業停止となり、行政処分や処罰の対象とされる場合があります。
この許可を取るためには、都道府県知事が定めた製造施設、製造設備などの基準に適合しなければならず、製造場所の所在地を管轄する保健所で基準等の確認が必要となります。
なので厳密には所在地の保健所ごとに手続きが違う可能性があるかもしれませんが、一般的な流れをご説明したいと思います。
1【事前相談】
施設基準に合致しているかなどを事前に確認するため、施設の工事着工前に図面等を持参の上、保健所の食品衛生担当へご相談ください。
また同時に衛生的な管理運営をするため、施設ごとに食品衛生責任者を置かなければなりません。
他にも貯水槽使用水(タンク水)や井戸水等を使用する場合には、水質検査も必要になります。
2【営業許可申請】(書類の提出)
施設完成予定日の10日くらい前に必要書類を保健所に提出して下さい。
必要書類(新規申請の場合)
書類名 | 内容 |
営業許可申請書・営業届 | 必要事項を記入 |
平面図 | 営業施設の図面は、製造、調理、販売などに必要な機械器具の名前・配置状況が分かるものを持参してください。また、施設の大きさが把握できるように、縦横の長さも記入して下さい。 |
付近の案内図(地図) | 目印となる建物等を記載した地図を提出して下さい。地図帳をA4版にコピーされたものでも構いません。 |
水質検査の結果(使用水が水道水以外の場合) | 貯水槽使用水、井戸水使用の場合のみ提出が必要。※許可後も、年1回以上水質検査を行い、成績書を保管すること |
食品衛生責任者の資格を証明するもの | (例)「調理師免許」、「製菓衛生師免許」、「栄養士免許」、「食品衛生責任者養成講習会修了証」など |
登記事項証明書(法人のみ) |
申請手数料
申請手数料は所在地の保健所ごとに違うかと思います。
私が申請予定の保健所では酒類製造業の申請手数料は16,000円でした。
他には、例えば東京都多摩地区だと21,600円だったので、やはり所在地の保健所に確認しましょう!
申請先&問い合わせ先
所在地の保健所によろしくお願いいたします。
3【施設検査の打合せ】
担当者と施設の確認検査の日程等について相談をしてください。
4【施設の確認検査】
施設が申請のとおりか、施設基準に合致しているかを保健所の担当者が確認します。
- 検査の際は営業者が立ち会ってください。
- 施設基準に適合しない場合は許可になりません。不適事項については改善し、改めて検査日を決めて再検査を受けてください。
※施設基準に合致していることが確認できた場合、営業許可書交付予定日のお知らせを交付されます。
5【営業許可書の交付】
営業許可書交付予定日になりましたら、営業許可書交付予定日のお知らせ及び認印を持参して、保健所で営業許可書の交付を受けてください。
施設基準適合確認後、許可書を作成しますが、交付までには数日かかりますので、開店日等についてはあらかじめ打ち合わせをしてください。
6【営業開始】
営業開始後は、施設や設備が基準どおりに維持管理されているか常に点検するとともに、食品の取扱い等にも十分留意して、より安全で衛生的な食品を提供するよう心がけてください。
- 食品衛生責任者の名札(10cm以上(幅)×20cm以上(高さ))を施設内に掲示してください。
という形でいよいよ、酒類製造が可能となるわけです!
が・・・
(3)工場が建設可能な用途地域(建築基準法)
そう、実は工場が建てられる場所というのは建築基準法で定められているのです。
つまり定められた地域外に「製造場」を立てたら、色んなこれまでの許可を得たにもかかわらず、撤退しなくてはいけなくなったりするのです・・・
用途地域の概要
工場が建築できる用途地域を条文だけで説明するとわかりにくいので、工場が建築できる用途地域を表にまとめました!
表をみるとわかるように、右側になるにつれて用途規制が緩くなり、建築できる工場の範囲が増えてます。(田園住居地域は除きます。)
どれも面積が大事になってきますから、ご自身のやろうとしている酒類製造の規模によって用途地域をしっかり選んでいきましょう。
クラフトビールの製造のように小さい規模でやるなら選択肢は増えますが、要件をしっかり理解しないと、建てた後に困ることになるので、事前の確認は必須です!
以下、用途地域の条文にそって、工場建設の可否をみていきましょう。
用途地域ごとの工場建設の可否
それでは、各用途地域の区分ごとに工場建設の可否をみていきましょう。
法別表2では、用途地域ごとに建築できるものと建築できないものが記載されています。
第1種・第2低層住居専用地域、第1種中高層住居専用地域
第1種・第2種低層住居専用地域、第1種中高層住居専用地域は、法別表2の(い)(ろ)(は)欄に建築できる建築物が記載しています。
単独の工場は建築不可
法別表第2のそれぞれの欄を確認しても工場はないです。
よって、単体で工場を建築することはできません。
第1種低層住居専用専用地域に建築できる兼用住宅【施行令第130条の3】
単独で工場を建築することはできないと説明しました。
しかし、法別表第2(い)第2号では、【住宅で事務所、店舗その他これらに類する用途を兼ねるもののうち政令で定めるもの】と記載しています。
この中に工場(原動機を使用する作業場)が含まれています。
よって、施行令施行令第130条の3に書いてある兼用住宅は建築可能です。
施行令第130条の3
住宅は、延べ面積の2分の1以上を居住の用に供し、かつ、次の各号のいずれかに掲げる用途を兼ねるもの(これらの用途に供する部分の床面積の合計が50㎡を超えるものを除く。)とする。
よって、まとめると以下のとおりです。
- 延べ面積の半分以上が住宅
- 次の各号の用途を兼ねるもの
- 次の各号の延べ面積の合計が50㎡以下
- 建築できる兼用住宅の条件(用途:工場に類するもの)【施行令第130条の3各号】
原則、工場はできませんが、令第130条の3の各号に書いてある建築物は建築可能です。(原動機の出力の合計が0.75KW以下)
- (第4号)洋服店、畳屋、建具屋、自転車店、家庭電気器具店
- (第5号)自家販売のために食品製造業を営むパン屋、米屋、豆腐屋、菓子屋
- (第7号)美術品、工芸品を製作するアトリエ、工房
兼用住宅で事務所部分等と兼用する部分の面積は面積按分する
兼用住宅であれば、住宅部分と廊下、玄関、便所等を兼用(共用)している場合があります。
その兼用部分をどれだけ50㎡等に含めるかについてですが、面積按分をします。
住宅(面積制限を受けていない用途の部分)と事務所(面積制限を受ける部分)との面積割合を兼用(共用)部分に乗じて、その面積をそれぞれの専用部分に加算します。
面積按分の例(事務所兼用住宅延べ面積140㎡の場合)
それぞれの面積は住宅部分90㎡、事務所部分30㎡、兼用部分20㎡とします。
まず、住宅部分と事務所部分の面積割合は90㎡と30㎡ですので、75%と25%となります。
兼用部分は20㎡ですので、それぞれの割合をかけると、20㎡×75%=15㎡と20㎡×25%=5㎡となります。
住宅部分の面積は90㎡+25で115㎡となり、事務所部分の面積は、30㎡+5㎡=35㎡となります。
という計算をしていただき、面積制限を確認していただくことになります。
第2種中高層住居専用地域に建築できる工場
第2種中高層住居専用地域に建築できない建築物が法別表第2の(に)に書かれています。
また、第2号に【工場(政令で定めるものを除く。)】と記載されています。
よって、原則、工場は建築できないですが、政令に定めている工場は建築可能ということです。
施行令第130条の6
法別表第2(に)項第2号(・・・)の規定により政令で定める工場は、パン屋、米屋、豆腐屋、菓子屋その他これらに類する食品製造業を営むもの(同表(と)項第3号(2の2)又は(4の4)に該当するものを除く。)で、作業場の床面積の合計が50㎡以内のもの(原動機を使用する場合にあつては、その出力の合計が0.75KW以下のものに限る。)とする。
よって、以下の3つを満たすものが建築可能です。
- パン屋、米屋、豆腐屋、菓子屋その他これらに類する食品製造業を営むもの(一部不可有)
- 作業場の床面積が50㎡以内
- 原動機の出力の合計が0.75KW以下
第1種・第2種住居住居地域・準住居地域に建築できる工場の種類
第1種・第2種住居地域・準住居地域に建築できない建築物は、法別表第2(ほ)と(へ)と(と)に記載しています。
その中で工場については、(へ)第2種住居地域の第2号に【原動機を使用する工場で作業場の床面積の合計が50㎡を超えるもの】と、(と)準住居地域の第2号に【原動機を使用する工場で作業場の床面積の合計が50㎡を超えるもの(作業場の床面積の合計が150㎡を超えない自動車修理工場を除く。)】と記載しています。
第2種住居地域の第2号と準住居地域の第2号の違い
第2種住居地域と準住居地域の違いは、法別表第2(と)第2号の()の中に作業場の床面積の合計が150㎡を超えない自動車修理工場を除く。と記載しています。
そのため、準住居地域には、作業場の床面積の合計が150㎡を超えない自動車修理工場は建築可能となります。
よって、第1種・第2種住居地域、準住居地域では、原動機を使用する工場で作業場の床面積が50㎡以内の工場が建築が可能となります。
田園住居地域に
田園住居地域に建築できない建築物が法別表第2の(ち)に書かれています。
また、第2号に【農産物の生産、集荷、処理又は貯蔵に供するもの(政令で定めるものを除く。)】と記載されています。
施行令第130条の6第2号
法別表第二(ち)項第2号(法第87条第2項又は第3項において法第48条第8項の規定を準用する場合を含む。)の規定により政令で定める建築物は、農産物の乾燥その他の農産物の処理に供する建築物のうち著しい騒音を発生するものとして国土交通大臣が指定するものとする。
まとめると、田園住居地域で建築可能な工場は、著しい騒音を発生させない農産物の処理を行う工場となります。
近隣商業地域、商業地域に建築できる工場
商業地域に建築できない建築物が法別表第2の(ぬ)に書かれています。
第2号:床面積
原動機を使用する工場で作業場の床面積の合計が150㎡を超えるもの(日刊新聞の印刷所及び作業場の床面積の合計が300㎡を超えない自動車修理工場を除く。)とあります。
第3号:建築できない工場の種類
次に掲げる事業(特殊の機械の使用その他の特殊の方法による事業であつて商業その他の業務の利便を害するおそれがないものとして政令で定めるものを除く。)を営む工場
第3号には、工場の種類が記載していおり、種類が多いため、法別表第2(ぬ)第3号をご確認ください。
よって、近隣商業地域と商業地域には、原動機を使用する工場で作業場の床面積が150㎡以内が可能です。(法別表第2(ぬ)第1号、第3号を除く。)
※日刊新聞の印刷所で作業場の床面積が300㎡以内も建築可能です。
準工業地域、工業地域、工業専用地域に建築できる工場
工業系の用途地域は、原則工場は建築できます。
しかし、危険度の高い工場や特殊な工場については、地域によってはできない工場もあります。
その工場の種類として、法別表第2の(る)準工業地域、(を)工業地域、(わ)工業専用地域ごとに記載していますので、ご確認ください。
作業場の床面積とはどこの部分?
各用途地域で、作業場の床面積が50㎡以下、150㎡以下という基準があります。
しかし、建築物によっては、どこが作業場で、どこが通路、倉庫かがわかりにくい場合があります。
そこで、ここでは作業場の部分の説明をします。
作業場に該当する例
作業場の部分の取扱いは以下のとおりです。
- 建築物内の製造、加工、仕上、仕分、包装、荷造等の作業を一定期間継続してもこなうことを目的とする場所
- 人が作業する部分だけでなく、機械を設置する部分も含む
- 製品をつくる工程で貯蔵すると同時に、製品に質的変化起こさせる場所(凝固させる冷蔵庫など)
作業場に該当しない例
工場内でも、下記に該当する場合は、作業場に該当しません。
- 工場内にある、倉庫、事務所スペース等
- 工場の設備機械室
- 人や車両が通行する部分で、間仕切壁等で明確に区画された部分
また、作業場とその他の部分を明確な間仕切り壁等がない形状で分ける場合は、作業場に含まれる可能性があります。
よって、判断に迷う場合は、事前に特定行政庁や民間確認検査機関とご相談ください。
原動機を使用する工場の原動機とは
工場の作業に必要な工程で、その中で使用する機械(原動機)は含みます。
原動機に含むもの
- 工場の中の原動機はもちろん、敷地内の屋外で使用される原動機
- 大型機械だけでなく、小型電動工具(ドリル、グラインダー等)も含む
- 作業で必要な冷凍装置(冷やして固める等)は含む
原動機に含まないもの
- 作業場の温度管理のために設置する空調設備
- 作業に関係ない、事務所や休憩所に設置する冷蔵庫
確認申請の添付書類として、原動機の種類や台数等を記載するようになりますので、事前に確認しておきましょう。
おわりに
だいぶボリューミーな記事となってしまいました。
まとめると、
- 酒類製造を始めるには『酒類製造免許』を税務署で取得する必要がある
- 食品『営業許可書』も保健所で交付してもらう必要がある
- その前に工場の建設地の『用途地域』を確認する必要がある
以上3点が大事です!
酒類製造を始めるにあたっては、これだけのことに配慮が必要です。
そのほかにも、酒類は【製造・流通・販売ごと】に許可が必要だったりと、結構制度は複雑です。
お酒で起業する際は、しっかりと事前確認をして、なるべくなら専門家にも相談しながら事業を進めることをおススメします!
それでは、また!
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