近年NISAで投資を始める人が増えています。
NISAを始めて初めての確定申告を迎える方もいるのではないでしょうか?
結論から申しますと、NISA口座のみでの取引なら、確定申告は基本的に不要です。
しかし、取引を行う証券口座の種類や取引状況によっては、確定申告が必要な場合、または、確定申告をした方がお得な場合があります。
本記事では、NISAでの利益には確定申告が必要ない理由や、確定申告が必要かどうか判断する方法などについて解説します。
積立NISAや新NISAで投資を行っている方は、ぜひ参考にしてください。
積立NISA・新NISAの確定申告は不要
旧NISAの「つみたてNISA」も、新NISAの「つみたて投資枠」や「成長投資枠」も、すべて確定申告は不要です。
確定申告とは、1年間の所得をもとに所得税の額を計算して、申告と納付を行う制度です。ただし、給与所得者である会社員の場合、勤務先の企業が年末調整で所得税額の計算や申告及び納付を行います。
そもそもNISAとは、投資利益にかかる税金が非課税になる制度です。2023年までの旧NISAも、2024年からの新NISAも、利益に所得税や住民税がかかることはありません。
旧NISAと新NISAの違い
NISAは、2024年に大きく変更されました。
まずは、新NISAと旧NISAの違いを具体的に見ていきましょう。
新NISA | 旧NISA | |||
---|---|---|---|---|
つみたて投資枠 | 成長投資枠 | つみたてNISA | 一般NISA | |
最大利用可能額 | 1,800万円(内、成長投資枠は上限1,200万円) | 800万円 | 600万円 | |
年間投資上限額 | 120万円 | 240万円 | 40万円 | 120万円 |
非課税保有期間 | 無制限 | 無制限 | 20年 | 5年 |
制度選択 | 併用可 | 併用不可 | ||
対象商品 | 金融庁の基準を満たした投資信託に限定 | 上場株式・投資信託など | 金融庁の基準を満たした株式投資信託とETF | 上場株式・株式投資信託・ETF・REITなど |
購入方法 | 積立 | スポット・積立 | 積立 | スポット・積立 |
移管(ロールオーバー) | 旧NISAからの移管不可 | 不可 | 可 |
旧NISAから新NISAの変更点を見ていきましょう。
新NISAは「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の併用が可能
旧NISAから新NISAへの変更点は、新NISAのつみたて投資枠と成長投資枠の併用ができるようになったことです。
旧NISAでは、つみたてNISAか一般NISAのどちらか一方を選んでNISA口座の開設をする必要がありました。
しかし、新NISAではつみたて投資枠、成長投資枠のどちらも同じNISA口座の中で取引できます。
旧NISAと新NISAの積立投資枠の投資できる金額の違い
旧NISAのつみたてNISAでは、年間40万円まで非課税での投資が可能でした。
一方、新NISAのつみたて投資枠は、年間120万円の非課税投資が可能です。
なお、この非課税投資枠の金額は投資商品を購入した金額で判定されます。また、年の途中で投資商品を売却してもその年の年間投資上限額が復活することはありません。
例えば、2024年1月に120万円の投資をしたとします。すでに投資可能枠の上限まで購入しているため、2024年内にそのうちの一部を売却しても、2024年中に新たな投資商品を非課税で購入することはできません。ただし、2025年には、また投資可能枠の上限120万円までの投資が可能となります。
旧NISAの一般NISAにおける年間投資額は120万円でしたが、新NISAの成長投資枠は240万円で、新NISAのつみたて投資枠との併用も可能です。
非課税保有期間
つみたてNISAの非課税保有期間は20年でしたが、新NISAのつみたて投資枠は無期限で投資商品を保有できます。
非課税保有期間に期限がないので「非課税期間が終了するころに保有資産が値下がりしていて損してしまう」といった心配がありません。値動きを見て、慎重に売却時期を決められるのがメリットです。
また、旧一般NISAの非課税保有期間は5年、新NISAの成長投資枠も無期限です。
非課税保有期間が無期限になったことで、新NISAには非課税保有限度額1,800万円という制限ができました。ただし、一部または全部の保有商品を売却すると、翌年以降、再度売却した分の非課税投資が可能になります。
なお、新NISAの非課税期間は無期限になりましたが、旧NISA口座で保有している商品の非課税保有期間が変わるわけではない点に注意してください。
注意:旧NISA口座で投資した商品の今後の対応
これまでの旧NISA口座で投資した商品は、今後も引き続き旧NISA口座で管理することになります。新NISA口座に移管することはできません。
そのため、現在つみたてNISA口座や一般NISA口座で投資した商品を保有している人は、非課税期間が終了する前に売却などの対応をとる必要があります。
ジュニアNISAは終了
旧NISAにあった子供向けの「ジュニアNISA」は2023年で終了しました。ただし、現在保有中のジュニアNISAについては、子供が18歳になるまで継続して非課税保有できます。
確定申告が必要かどうかは証券口座の種別で決まる
新旧にかかわらず、NISAを利用して投資利益が出た際に確定申告が必要かどうかは、取引を行った証券口座の種類によって決まります。
前述のとおり、つみたてNISAや一般NISAといった旧NISA口座や、新NISA口座で行った取引は非課税のため申告不要です。しかし、それ以外の証券口座でも取引を行う場合は、確定申告が必要かどうか確認しておきましょう。
ちなみに、新NISA口座は、単体での口座開設はできません。NISA口座を開設するには、NISA口座を取り扱っている証券会社や銀行で課税口座を保有する必要があります。
その課税口座の利用状況によっては、確定申告が必要な場合があるため、「NISA口座以外持っていないはず」という人も、一度ご自身の口座の保有状況を確認してください。
それでは、それぞれの証券口座ごとの確定申告の要否について、具体的に見ていきましょう。
NISA口座は確定申告が不要
つみたてNISAや一般NISAの「旧NISA口座」も、つみたて投資枠と成長投資枠の「新NISA口座」も、どちらも確定申告の必要がない口座です。
なので、NISA口座で投資商品を売買して利益が出た場合でも、確定申告をする必要はありません。
特定口座(源泉徴収あり)は原則として確定申告不要
特定口座(源泉徴収あり)は、原則として確定申告が必要ない口座で、源泉徴収口座と呼ぶこともあります。
確定申告が必要ない理由は、証券会社が特定口座(源泉徴収あり)の投資利益から所得税や住民税を源泉徴収しているからです。
個人事業主やフリーランスのように、確定申告を行う義務がある方でも、特定口座(源泉徴収あり)の口座で取引した投資利益については申告内容に含める必要がありません。
※ただし、損失が出ている場合には確定申告をする方がお得です!
ただし、特定口座(源泉徴収あり)の取引で損失が出ている場合は、確定申告することで所得税の還付を受けられたり、損失を翌年以降に繰り越せたりする可能性があります。
そのため、複数の証券会社で損失と利益の両方が出ている場合、義務ではありませんが確定申告をすることをおすすめします。
「損益通算」の場合
例えば、ある年にA証券会社の特定口座(源泉徴収あり)で100万円の損失が出ていて、B証券会社の特定口座(源泉徴収あり)で100万円の利益が出ている場合、トータルの利益は0円です。
しかし、B証券会社で開設した特定口座(源泉徴収あり)からは税金が差し引かれてしまいます。この場合、確定申告をして損益通算すると、B証券会社の特定口座(源泉徴収あり)で出た100万円の利益にかかった税金が還付されます。
これを「損益通算」といいます。
損益通算で、還付金が発生する可能性がある方は、確定申告をするのがオススメです。
「譲渡損失の繰越控除」の場合
また、投資の損失が出た場合、確定申告をすると翌年以降3年間損失を繰り越すことが可能です。
これを「譲渡損失の繰越控除」と呼びます。
翌年以降に利益が出た場合に税金を軽減できるわけです。
なので、来年以降を考えて確定申告をするのがオススメです。
具体的な確定申告についてのやり方はこちらの記事をご覧ください。
特定口座(源泉徴収なし)は原則として確定申告が必要
特定口座(源泉徴収なし)での取引で利益が出た場合は、原則として確定申告が必要です。特定口座(源泉徴収なし)は、簡易申告口座と呼ぶこともあります。
証券会社が作成する「年間取引報告書」をもとに確定申告を行います。年間取引報告書には、1年間の取引の内訳がまとめて記載されているため、確定申告の際に自分で収入や経費、利益を計算する必要はありません。
ただし、年末調整をした給与所得者で、投資利益を含む年間の副業所得が20万円以下の方は確定申告不要です。投資利益にかかる所得税を納税する必要がないため、特定口座(源泉徴収あり)よりも手元に多くの利益を残せます。
一般口座は確定申告が必要
一般口座は、自分自身で利益の計算を行い、確定申告を行わなければならない口座です。
一般口座の利益について確定申告する際は、投資を行った本人が「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」を作成します。
証券会社が作成する取引明細書等を用意して、年間の収入や投資商品の取得費、手数料などを記入して作成してください。
具体的な確定申告についてのやり方はこちらの記事をご覧ください。
特定口座の制度は2003年に開始されていますが、それ以前は一般口座で取引を行い、確定申告をしていました。しかし、特定口座が登場した今では、一般口座を選択するメリットはありません。
自分で計算をしたいといった特別な理由がないのであれば、特定口座の方が便利です。
なお、一般口座で取引を行った場合も、勤務先で年末調整を受けていて、投資利益とその他の副業所得の合計が20万円以下の方は確定申告不要です。
NISAと確定申告に関する注意点
新NISAや旧NISAの利益は確定申告不要ですが、確定申告をするにあたって注意しておかなければならない点もあります。投資の利益が非課税になるからこそ、それ以外の投資とは異なる特徴があることを覚えておきましょう。
NISAは「損益通算」の対象にならない
NISA口座の利益は、新NISAでも旧NISAでも非課税です。
しかし、損失が出た場合、ほかの利益と損益通算もできないことに注意しましょう。
例えば、証券口座Aと証券口座Bを持っている人が、ある年に証券口座Aの取引で利益30万円、証券口座Bの取引で損失10万円を出したとき、確定申告をすると「30万円-10万円=20万円」が利益になります。
すると、証券口座Aの利益から所得税が源泉徴収されていた場合、引かれすぎていた分の税金が還付されます。
しかし、NISA口座では損益通算が受けられません。A証券会社の取引で利益30万円、NISA口座で損失10万円という場合、30万円の利益に対して税金がかかります。
なのでNISA口座以外でも取引を行う場合は注意してください。
なお、NISA以外の口座では損失を翌年以降3年間繰り越す「繰越控除」を利用できますが、NISA口座では繰越控除もできません。ご承知おきください。
NISAの利益は扶養控除・配偶者控除の適用に影響しない
扶養控除や配偶者控除は、配偶者や扶養親族の所得額によって適用できるかどうかが決まります。
しかし、NISAで得た利益は非課税のため、扶養控除や配偶者控除で所得額の判定をする際の対象にはなりません。
NISA口座での投資利益は、所得金額に加算する必要がないからです。
例えば、扶養控除の適用要件は、扶養親族の年間の合計所得金額が48万円以下です。NISAの投資利益を含む扶養家族の年間の合計所得金額が90万円だった場合の扶養控除の適用可否は以下のようになります。
- 適用可:NISAの投資利益が50万円、その他の所得が40万円だった場合
- 適用不可:NISAの投資利益が40万円、その他の所得が50万円だった場合
また、配偶者控除は納税者本人の所得が1,000万円以下でないと利用できませんが、納税者本人にNISA口座での利益があった場合も、所得に含める必要はありません。
まとめ
いかがだったでしょうか?
この記事をまとめると、
- NISA口座のみでの取引なら、確定申告は基本的に不要です。
- 特定口座(源泉徴収あり)は原則として確定申告不要ですが、損失が出ている場合には確定申告をする方がお得です。
- 特定口座(源泉徴収なし)や一般口座での取引で利益が出た場合は、確定申告が必要です。また、損失が出ている場合には確定申告をする方がお得です。
- 一般口座は必ず確定申告が必要です。
- NISA口座については「損益通算」や「繰越控除」ができません。
以上が要点になります。
また、確定申告が必要だとわかった場合には具体的な確定申告のやり方が気になるところだと思います。
株式投資の確定申告のやり方はこちらの記事をご覧ください。
この記事が皆様のお役に立てると嬉しいです。
それでは、また!
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