近年、副業を持つ人が増えていますが、副業で稼いだ分、気になるのが税金の問題です。
特に、「雑所得に経費は計上できるのか」という疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
この記事では、雑所得における経費計上の可否や、そのポイントについて詳しく解説していきます。
副業を始めたばかりの方や、確定申告の際に悩んでいる方にとって、きっと役立つ情報となるはずです。
それでは、雑所得と経費の関係について、一緒に見ていきましょう!
雑所得とは?
雑所得は、所得税法によって10種類に分類される所得のひとつです。
雑所得は次のように定義されます。
雑所得とは、他の9種類の所得のいずれにも当たらない所得
所得税法では、所得を内容に応じて10種類に分類しており、雑所得は他の9種類のどれにも当てはまらない所得です。
ちなみに10種類の所得は次のとおりです。
所得の種類 | 内容 |
---|---|
利子所得 | 預貯金や公社債の利子ならびに合同運用信託および公社債投資信託の収益の分配による所得 |
配当所得 | 株式や出資者が会社から受ける配当、投資信託や特定受益証券発行信託の収益の分配による所得 |
不動産所得 | 不動産を貸し出して得た所得。具体的には、土地や建物などの不動産の貸し付け、借地権など不動産の上に存する権利の設定および貸し付け、船舶や航空機の貸し付けによる所得 |
事業所得 | 農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業、その他の事業から得た所得 |
給与所得 | 勤務先から支払われた給与、賞与などの所得 |
退職所得 | 退職により勤務先から支払われる退職手当や、厚生年金基金等の加入員が退職した際に支払われる厚生年金保険法に基づく一時金などの所得 |
山林所得 | 山林の譲渡による所得 |
譲渡所得 | 土地や建物、ゴルフの会員権などの資産を譲渡することによって生じた所得、および建物などの所有を目的とする地上権等の設定による所得 |
一時所得 | 利子所得から譲渡所得までのいずれにも該当しない所得で、営利を目的とした継続行為から生じた所得ではないもの、かつ労務や役務の対価ではない所得、資産譲渡の対価でもない所得 |
雑所得 | 上記の9種類の所得に当てはまらない所得 |
雑所得は消去法で定義されていますが、具体例の例示もされていますので、みていきましょう。
雑所得は大きくわけると3種類ある
雑所得は大きく分けると、3種類に分けられます。
- 国民年金や厚生年金保険などの「公的年金等」
- 副業で得た所得などの「業務」
- 民間保険会社の個人年金などの「その他」
雑所得と事業所得の違い
雑所得かどうかを判断する中で一番迷うのが、事業所得との違いの部分だと思います。
特に会社員の方だと、副業で得た所得については、雑所得なのか?事業所得なのか?判断に迷うところです。
この点、雑所得と事業所得の違いは、事業の規模や継続性、反復性などの要素で判断します。
明確な基準はありませんが、一般的に生計を立てられる規模の所得があれば事業所得、隙間時間などを活用して行っている業務であれば雑所得と判断されます。
多くの場合、会社員の副業は雑所得と見なされます。
しかし、副業であっても、本業以上の所得を得ている場合や、事業として継続して行っている場合は、事業所得と判断される場合もあります。
ちなみに事業所得と雑所得とで利用できる制度の違いは下の表の通りとなります。
項目 | 事業所得 | 雑所得 |
---|---|---|
青色申告 | 可能 | できない |
損失の取扱い | 他の所得から控除可能 青色申告で繰越可能 |
雑所得(年金など)内でのみ控除可能 |
記帳義務 | あり | なし (ただし、前々年の収入金額が300万円超の場合は領収書等の保存が必要) |
青色申告特別控除 | 最大65万円まで利用可能 | なし |
必要な書類 | 青色申告決算書・収支内訳書 | なし (ただし、前々年の年収1,000万円超の場合、収支内訳書が必要) |
従業員報酬 | 要件を満たせば可能 | 認められない |
少額減価償却資産の特例 | 青色申告が認められる | 認められない |
雑所得は、原則として記帳義務がなく、提出すべき資料が少ない反面、事業所得より税制上の優遇が少ないのがお分かりいただけると思います。
雑所得と一時所得の違い
雑所得と一時所得の違いは、継続性があるかどうかです。
一時所得には、懸賞の賞金や競馬・競輪の払戻金、一時金として受け取る保険金など、一度限りで継続しない所得が該当します。
そのため、業務として受け取った謝礼や、営利目的と見なされた競馬の払戻金などは該当しません。
また、一時金として受け取った保険金であっても、保険の契約者と保険金の受取人が異なる場合は、所得ではなく贈与と見なされます。
雑所得の経費に計上できる費用と計上できない費用の違い
経費は、所得を得るために支出した費用です。
費用といっても、経費に計上できる費用と、計上できない費用があるわけです。
所得は収入から経費を差し引いて算出するため、経費を正しく計上すれば、所得の金額が小さくなり、結果として、所得税や住民税の節税につながる可能性もあります。
また、個人事業主やフリーランスだけでなく、副業をしていて雑所得がある会社員の方も、経費の計上が可能です。
なので、会社員だから経費計上できないとあきらめず、まずは経費に計上できる費用の範囲を知ることが大事です。
それでは、経費に計上できる費用と計上できない費用についてみていきましょう。
雑所得で経費に計上できる費用
雑所得で経費に計上できる費用は、雑所得を得るために支出した費用です。
例えば、パソコン・スマートフォンなどの購入費、通信費、家賃などが該当します。また、打ち合わせをした際の飲食費、取引先に出向いた際の交通費なども経費に該当します。
なお、家賃や通信費など、プライベートとの切り分けが難しい費用については、プライベート分と事業分を分ける家事按分(かじあんぶん)をすれば、経費に計上することが可能です。
家事按分は例えば、1日2時間インターネット回線を使って副業をし、プライベートでインターネット回線を使うのは1日2時間程度であれば、回線料金の約50%は雑所得の経費として良いと考えられます。
雑所得で経費に計上できない費用
業務に関係のない支出は、雑所得の経費に計上できません。判断基準は、業務を行っていなくても必要となる支出かどうかです。
例えば、業務に関係のない昼食代や品物の購入費などが該当します。一方、業務を行ううえでリスクに備えて損害保険に加入した場合、保険料は経費に計上可能です。
雑所得に経費を計上する際のポイント
ここまで雑所得の経費にできる費用についてみてきましたが、具体的に経費に計上する場合はどうすればよいか?みていきましょう。
雑所得について、経費を計上する際には4つのポイントがあります。
確定申告が必要となる場合がある
雑所得がある人のうち、確定申告が必要となるのは以下の条件のいずれかに該当する人です。
- 個人事業主やフリーランスなど事業所得の申告をする人で、雑所得もある人
- 会社員などの給与所得者で、雑所得やその他の所得が20万円を超える人
- 会社員などの給与所得者で、本業以外の給与収入と、雑所得やその他の所得の合計が20万円を超える人
- 会社員などの給与所得者で、年末調整を受けていないために確定申告が必要で、雑所得もある人
- 他の理由で確定申告を行う人で、雑所得もある人
経費に上限はない
雑所得に経費を計上する際、経費に上限は設けられていません。
例えば、雑所得の売上が100万円あり、経費に99万円かかっている場合は、雑所得を計算するうえでの収入は100万円、所得は1万円となります。
ただし、先述した通り、経費に計上できるのは、あくまでも雑所得を得るために必要な支出だけです。事業に関係のない支出を経費として扱うことはできません。
計上すべきでない経費を計上した場合は修正が必要
雑所得に経費を計上する際、計上してはいけない支出を経費にしてしまった場合は、修正の手続きが必要です。
確定申告の期間内に間違いに気が付いたときは、訂正申告を行います。
一方、確定申告の期限後で不適切な経費計上に気が付いたときは、修正申告を行わなければなりません。修正申告をすると、一般的に税額が増えることになるため、追加の納税も必要です。しかも、自発的に修正申告をせず、税務署からの指摘があってから修正した場合は、別途、過少申告加算税などが課せられる可能性があります。
なお、経費の計上漏れなどの理由によって、本来の税額よりも多い税額を納税していた場合は、訂正をしなくても違法ではありません。訂正する場合は「更正の請求」という手続きが必要になります。「更正の請求」が税務署に認められれば、払いすぎた税金の還付を受けられます。
領収書やレシートの保管が必要
雑所得の経費を計上する際は、領収書やレシートといった支払いの根拠が必要です。
確定申告時に提出するわけではありませんが、税務署から問い合わせがあった際に提示できるように保管します。
領収書やレシートがない交通費などについては、乗車日と区間、金額、目的を明記した一覧表などを作成します。また、クレジットカードの明細書やATMの振込明細書なども支払いの根拠になります。
前々年の雑所得の収入が300万円を超える人は、5年間領収書やレシートの保存が義務付けられています。
なお、白色申告で確定申告をする場合は5年間(消費税課税事業者は7年間)、青色申告の場合は7年間、領収書やレシートを保存する義務があります。
まとめ
いかがだったでしょうか?
雑所得についても、経費の計上が可能です。
経費を適切に計上することは、節税につながるため、1年分の領収書やレシートを保管して、こまめに記録しておくことがおすすめです。
ただし、節税の効果を受けるには、確定申告が必須になりますので、その準備もしっかりとしていきましょう。
この記事が皆さんのお役に立てれば幸いです。
それでは、また!
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